俺の日々 2020年9月前半

内田百閒、吾妻ひでお、目黒孝二、大森望坪内祐三……
魅力を感じる文章の書き手が綴る「日記」が好きだ。そもそも書き手自身に魅力を感じているから日記を読んでも面白いといえば、それまでであるが、「日記」にはふつうの文章とは違った色合いが出る。というわけで、書いてみる。
webコンテンツの潮流には真っ向から逆をいくような内容である。しかし、そもそも収益化だの、えすいーおーだの、読者のためだの……そうしたことを一切考えず、好き勝手気ままに書くことが、このブログの理想的な姿だ。
またこの一連のエントリは、アルコールのせいで日々消えゆく記憶とともに生きる人間の備忘録という意味もある。

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9/1(火)
変わらず同居人の友人が家に。人が一人増えるだけで、こんなにも家が賑やかになるのかとしみじみ思う。きっと孫が帰ってきたときの祖父母も似たような感覚になるんじゃなかろうか。いや、その方がもっと感慨深いんだろうけど。なんにせよ、愉快であることに変わりはない。

 

9/2(水)
昔から知り合って間もない人と会うときにはついつい飲み過ぎてしまうきらいがある。昨日はウイスキー、日本酒、ワイン、酎ハイのちゃんぽん。痛飲。当然のごとく気分が優れず、仕事は進まず。屍のようにモニター前に伏し続ける。
夜、初台のシンチャン(変換出てこず)ウイグル料理屋。干豆腐、羊肉、小籠包、ラグ麺。あとはタクラマカンみたいな名前の酒で喉を潤す。美味満腹。満足。

 

9/3(木)
珍しく週の終わりかけにもかかわらず仕事に集中。締め切りが立て込んでいたことと二日酔いでなかったことな大きな要因だろうと思う。そう思うと、いかに酒が悪いものなのか。
夜、△『戦国と忍』を読む。原典にあたって忍者の実態を紐解く心意気はわかるが……うーん。
同居人の友人が家を後にして、途端に静かに。

 

9/4(金)
仕事集中力皆無。どうせ土日にやればいいやのダメダメ精神が発動。夜、これまで付き合いのあった会社からスタッフとしての参画を打診され(というと聞こえがいいが実態は、あまりの落ちぶれぶりを見かねて声をかけられた、という具合だろう)、面談。それから、かつて仕事上の付き合いがあった編集者の先輩と恵比寿「たつや」。歳こそ離れている(二回りくらい)ものの、いつ会っても楽しい。つい甘えて飲みすぎるが、ウコンハイなので良かろう。

 

9/5(土)
ウコンハイの効能か、二日酔いなし。
10年来の友人Sと会いバスケ……をしようとするも、リングに集うちびっ子たちのあまりの技術の高さに己が居た堪れなくなり、早々に退散。銭湯に行き、常連客にいびられながらサウナ。幅を利かせる常連客、ってのはどんな所にもいて、どんな所でも厄介。しかし、サウナで遭遇するそれはとりわけ厄介。帰宅後、家でタコスをつくり、よく食べ、よく飲み、よく眠る。

 

9/6(日)
家に泊まった友人Sと共に東京03『ヤな塩梅』の配信ライブを見る。配信で4,500円というのはなかなか強気な金額に感じられてしまうが、適正価格というのも、それはそれでわからない。疑似同期性による適度な緊張感がありながらも、寝転がりながら鑑賞できる点がとても良かった。通信機能、つまりインフラの発展に伴って鑑賞スタイルはどんどん多様になりゆくのだな、と、当たり前のことを当たり前に思う。
夜、料理中に火傷。

 

9/7(月)
6:30起床。7:00仕事開始。早々に力果てる。

 

9/8(火)
何度同じ要望を伝えても空返事で無視し続けられるとさすがに辟易。いや、まあ、人と住むということはなかなか困難なもんで。結局は他人なわけですし、コロナ禍ですし、なんですし。と、まあ、なんとも愚かなストレスを抱えながら、「もう飯つくってやんねえ」といった気分で一人近所のデニーズに来ると、俺だけ見えてないのか。案内の声がかからない。これも運命。そう思うといくらか気持ちが楽になる。そうして、ここまで、なんとか生きてきたのだ。イライラに耐えかね、カットステーキを喰らう。異常といっていいほど温い。情けないことこの上なし。夜「桔梗」でラーメンとレモンサワー。

 

9/9(水)
30時間かけて△『龍が如く7』をクリア。それを含めて如くシリーズだと頭で理解しながらも、演出のあけすけさについていけず。

 

9/10(木)
終日仕事。契約書を待つもまだ届かず。
○西田藍『或る女おたく「おれ」』、○高山羽根子『白球を追いかける人、を追いかける人』、◎北村紗衣『私たちは帝国だったんだけど、とはいえ私はストームトルーパーにすらなれないかもしれない』、◎藤谷千明『バンギャルの見られ方』……もろもろ読む。総じて他のオタクとの差異……つまり、ムキー私は他のオタクと違ってこうだったんだー!が語られがちだった印象。企画の構造上そうなるのは避けられないものの、相対的でありながら総体的な論考が読みたかった。というわけで、藤谷氏の原稿が出色。
夜、ファーストシーズン以来に○『ラップスタア誕生』を見る。なんとItaq!しかも驚くほどかっこいい!内政を突き詰めた先のコンシャスさ。彼が高校生だった頃から聞いてきたってことを差し引いても良かった。

 

9/11(金)
仕事ほとんどせず、夜、同居人と仲違い。

 

9/12(土)
祝!場外馬券場営業再開!実質開店休業状態の人入りではあったものの、あの猥雑な場所が戻ってくる第一歩だと思うと感慨深い。昼、水道橋「ぽっぽっ屋」でラーメン。かれこれ10年以上通い続けている店のひとつ。
帰宅して△『THE BOYS2』1〜4話……を見るも、シーズン1の登場人物・相関関係がすっぽり抜け落ちており、何がなんやらわからない。Wikipediaを開いたスマホ片手に観賞することに。この記憶力の欠如はどうにかならんものか。それにしても、シーズン1で描かれたホームランダーの「お前……マジか……」感を越える衝撃が起こらなそうで、今後の展開はどうなることやら。夜、幡ヶ谷「可禮亜」で焼肉。店員の振る舞い、肉の具合、酒、何をとっても申し分ない。値段も手頃で、これはまたいい焼肉屋と巡り合ってしまった。春日の「新香園」に似ているところがある。いい。
1日かけてぱらぱらと○『本の雑誌10月号』を通読。穂村弘のエッセイで書かれていた「オリジン」を「オマージュした作品」で、オマージュした作品に先に出会っているとオリジンの衝撃が薄れる、どころか戸惑いすら覚えるという話に思わず膝を打つ。それでも、オリジン、つまり元祖が知りたいというところまで共感。わかる。

 

9/13(日)
外出・買い物。かねて「ほしいなあ、でも、わざわざ買うほどではないかなあ」と思っていたイヤホンを探しに新宿・ビックロ。売り場を一通り回るも、どれも同じように見えてしまう。家電に詳しい人はこういうときに明確な判断基準が持てていいよな、とつくづく思う。結局決め手は見た目と連続再生時間に落ち着く。ゼンハイザーのHD350を1万円強で購入。貧乏な自分にしては大きな買い物だが、ワイヤレスで30時間の連続再生が可能、断線の心配もない、何より仕事への集中力向上につながる(という希望的観測)のなら仕方ない額だと思い込む。これで片耳が断然したイヤホンから解放される。半年もの間そんな状態で乗り切ってきていたのだ。
新宿伊勢丹に流れ、カサゴとホタテを購入。これまでの間、歩きながらの飲酒で350ml×4本を午前のうちに消費。
昼寝の果てに、競馬のメインレース。ミスターメロディとダノンスマッシュの二頭軸から総流しにした三連複130倍が的中。リアルタイムで見られなかったもののホクホク。夜、アマプラのドキュメンタリー○『塀の中の少年たち なぜ彼らは殺人を犯したのか』を一気見。価値のあるドキュメンタリーという印象。

 

9/14(月)
「あの水道屋のやつ挨拶しねーんだよ」と、店員が出入り業者の愚痴を言っていたかと思うと、今度は同グループの店舗の売り上げを大声で喋るラーメン屋。すごいな、と思う。
夜、会社に退職の意向を伝え、サウナ。人によってさまざまではあろうが、自分にとってサウナの満足感を左右するものは混み具合の一点だなと痛感する。今日は最高。

 

9/15(火)
仕事の資料で△『ロンメル将軍 副官が見た「砂漠の狼」』読む。知識不足もあってか魅力が掴みきれず難儀。サンキュータツオ○『これやこの』を読み切って飲酒へ。健康診断の予約をしたが、肝臓の数値がとかく不安。