やめてほしい居酒屋の「注文コール」の話

 居酒屋で注文をした際に店員から「ハイヨロコンデ!」とけたたましい声をあげられた経験のある人は少なくないだろう。あのかけ声、実は居酒屋チェーン「やるき茶屋
」にルーツがあるという。『ZUU online』で公開された記事「「はい、よろこんで!」のルーツはあの店だった―成長を支えた魔法の言葉」によると、

「はい、よろこんで!」の由来は大庄 <9979> の運営する居酒屋チェーン「やるき茶屋」にある。今から35年前の1982年、「庄や」の運営が好調で店舗数を60まで増やしていた同社は次なる展開を考えていた。新業態として、かつて峠の茶屋で旅人が一息ついた時のイメージをコンセプトに「やるき茶屋」の出店が計画されたのである。当時の社長であった平辰氏は「やるき茶屋」の出店にあたり、「ご来店のお客様に、やるき茶屋独自の声掛けをしよう」と指示を出した。そこで社長の実弟であり、当時の営業本部長の平博氏が考案したのが、どんな時にも喜んで接客を行うという意味を込めた「はい、よろこんで!」であった。

 とのこと。


“成長を支えた魔法の言葉”と書けば、聞こえはいいが、私はこのかけ声がとにかく苦手だ。たかだか瓶ビール一本を注文したくらいで喜ばれる筋合いはないし、喜ばれるために酒を飲みに来ているのではない。自分の飲酒欲求を満たすためだけに、俺は酒を呑むのだ。そもそも、やかましくて仕方ない。注文をするたびに「ハイヨロコンデ」を聞かされると思うと、それだけで店を出ていきたくなってしまう。


フランス料理店で「シルブプレ」の声が聞こえてきたり、、、あとはなんだ、パッと具体的な例が浮かばないが、とにかくああした決まったかけ声で嬉しい気持ちになったことが、たったの一度もないわけだ。

 

 まあ、あのかけ声に“元気をもらえる”と思う向きもあるのだろう。それはそれでいい。


今回書きたいのはそんな話ではない。「ハイヨロコンデ」についてではない。
店オリジナルの変わったかけ声を否定するうえで、もっとも有効かつ手っ取り早い選択は店に行かないことだ。一消費者としてそれくらいの自由は許されよう。そもそも自分に合わなければ自然と店から足も遠のく。「嫌なら見なければいい」のそれだ。「嫌なら行かなければいい」だ。

 
 しかし、贔屓にしている店(このブログで最近熱心に更新している日記にもよく登場する初台「まことや」)で、「うわ~それはやだな~」というセリフが聞こえてきたのだ。居酒屋砂漠の地域、「嫌なら行かなければいい」で済ますには惜しい。味、値段、雰囲気……あらゆる面で特に不満のない店は、この一帯でとかく貴重なのだ。アルコール依存症一歩手前の人間としては……


 注文の度に「やだな~」というかけ声を浴びせられるなら、「もう行ってたまるか」と諦めもつこう。つまり、今回遭遇した「やだな~」は“かけ声”ではないのだ。タイトルにも記したように“注文コール”なのだ。
 あれは友人と二人で店を訪れたときのこと。いつもはつまみを2、3頼んでただただ酒を煽るだけなのだが、宴席は盛り上がる。メニューを囲んで無邪気に注文。

 

 事件が起きたのは酒が進み、もう一品くらいつまむかと「よだれ鶏」を頼んだときだった。

「はい~よだれ一丁~よだれね~よだれ~!」そんな声をキッチンに向けて伝えているのだ。
いや~!「よだれ」はないでしょ!勘弁してくれ~!

 

実際によだれ鶏がテーブルに供されるときも「はい~よだれね!」と。味は低温調理されたむね肉が大変美味でした。が、やっぱり「よだれ」はないでしょ!勘弁してくれ~!

 

以上、オチの弱い小話でした。日常で遭遇する違和感ってそんなドラマチックなもんじゃないですもんね。と、言い訳めいた締めで。