みんなの記憶の片隅にある「“駅ビル”の思い出」(大阪杯予想)
あなたには思い出の駅ビルがあるだろうか。俺にはある。というわけで書く。
俺の知らぬ間に「ASSE」が閉館していた。54年の歴史に幕をおろしたという。
パッとしないアパレルショップ、品揃えの悪い書店、小汚いトイレ、観光客に金を落としてもらうための狙い以外ない飲食店(ただしお好み焼き「麗ちゃん」だけは別格)……「ASSE」はどこにでもある駅ビルだった。屋上にちょっとした遊園地でもあればノスタルジーな魅力が増されるものだろうが、そんなものはない。もちろん、ブランディングにしっかり力を入れているというわけでもない。「駅前市街地の空洞化」を体現するような駅ビルだった。
思い入れがないわけではない。通学時に必ず通る駅ビルで、中学2年生の頃には他校の女子と手をつないであてどなく歩いた。2,3回のデートで自然消滅した。5階にあった書店で格好つけて思想棚に並ぶ本を立ち読みしていた。内容は一つも理解できなかった。打ち上げというものをはじめて体験したのもASSEでのことだった。文化祭後に30人ほどで鉄板焼き屋に行き、その場のノリでビールを頼んだ。店員に断られた。
進学を機に上京した時に降りたった高田馬場駅。妙に落ち着いた心持ちになったのは、今思い返すと駅ビル「BIG BOX」に既視感があったからかもしれない。都会に出て地に足がつかないことはなかった。駅ビルのヤレ具合に地元とのつながりを覚えて、東京の暮らしにもすぐ馴染んだ。大学はすぐにやめた。
あなたには思い出の駅ビルがあるだろうか。きっとある。それだけ。
さて、大阪杯。かつて「BIG BOX」に覚えたような「既視感」を感じさせられるジナンボーに本命の印を打った。常に行きたがる彼の走りには、母アパパネの姿がダブったのだ。
明確な逃げ馬がいない今回のメンバー。テンがない(印象の)ジナンボーにとっては理想的といえるだろう。前走で馬体を増やし、本格化の兆しを見せつつある良血馬に期待したい。