環境から飛び出して(スパーキングレディーカップ予想)

f:id:BxKxN:20170706120844j:imageAmazonが六本木にポップアップストアを開店するというニュースを目にした。
プライム会員の魅力を伝えることが主な目的で、商品販売は行わないとのことだが、日本でも実店舗を展開していきたいという魂胆は透けて見えているし、そのための布石を兼ねているのだろう。
既にアメリカでは書店をオープンさせて、経営も軌道に乗っているわけで、日本全国各地にAmazon書店が遍在する未来もそう遠くはなさそうだが、果たしてそれは良いことなのか悪いことなのか。
税金を納めているのかどうかも不明瞭な会社に金を落とすなんてけしからん!
そんな話をしたいわけではない。
むしろ歓迎大歓迎。実店舗を持つこと大事。ウェルカムAmazon書店。
ただでさえ、ここ20年弱で書店の数は半分に減ってしまっているなか、書店が1店舗でも増えるのは単純に好ましい。ビジネスモデルも従来の書店とは違うわけで住み分けもできる。いいことづくし。

なんてったって、本は「どんな時に」「どこで買った」かも大事な要素。なんなら、そこまで含めることこそが読書体験だと考えているだけに、書店が存在するということはとても大切なのだ。
ワンクリックで読みたい本が手元に届く便利さも否定しないが、読書体験は購入する時点から始まっている、うん。


というわけで今回の更新は「どんな時に」「どこで買った」かを含めた読書の話からしていきたい。
あれは5,6年前の夏。
初めてのぞき部屋に行った帰りのことだった。
まだ歌舞伎町のコマ劇跡地に高層ビルが建つ前の暑い日、のぞき部屋 マドンナに入店した。
昭和から続いていそうなギラギラ感とキナ臭さが予てから気になっていたのだ。
金はないが、いかがわしい気持ちはある。そんな標準的若者が薄暗ーい階段を下りていくと、おじさん店員から2000円を支払うよう求められる。なんの話もなしに金からかよ…なんて思いながらも、財布の中から5000円札を取り出すと、お釣りの札を何度も数えながら
「個室に入って15分女の子のショーが鑑賞できます。撮影できるものは全て預けてください。破られた場合は罰金として50万円いただきますので必ず預けてくださいね。はい3000万円」
と、機械的に説明された。RPGのモブキャラばりの要件しか伝えてこない店員、そしてiPhoneまで預けなければいけないことに、なんだかイヤな気持ちになりながらもすぐさま個室に通された。後戻りはできない。
部屋の中にはティッシュとゴミ箱があった。広さは漫画喫茶の個室を二回り小さくしたほど。ゴミ箱の中には前任者のブツが残されており、思わず気圧されそうになるものの、ショーはこれから。楽しんでいこう。
好奇心で胸を躍らせていると、なぜかハードロックが流れ始める。すると間も無く嬢が登場。
30代半ばのお姉さまが不器用に腰をくねらせながらマジックミラー越しに挑発してくる。その後は各個室の前まで移動し、股ぐらをこねくり回して見せつけてくれる。
その間にBGMのハードロックは録音された喘ぎ声に何故か切り替わり、
「なるほど……このおばさんを見ながら中でいたせということか……」と察したものの、全く愚息は反応しない。
「嬢の足首に彫られた蠍のタトゥー、ガタガタだなあ……」などと考えていると、突然後ろから声をかけられた。
「オプションどうしますか?」
お、そんなサービスがあるんですね。
値段を聞いてみると、手でしてもらうのに2000円、口でしてもらうのに3000円。
いやー、声をかけてきた人もなかなかのもので……なんて断ろうかななんて考えている一方で踊り子さんはどんどんヒートアップしている。
BGMは録音の喘ぎ声から、これまた録音の「イクッ!…イクッ……!」というサウンドに変わり……
っておいおい、これじゃただの風俗レポになってしまう。


話を戻そう。
そう、結局自分は15分のショーの間中、死んだ魚のような目をして過ごしたのだ。ショーが終わり、やるせない気分に陥った自分が向かった先が新宿紀伊国屋だった。
オプションを一切使用しなかったことで浮いたお金を握りしめ、妙に達観したような気持ちで買った本は『もういちど読む山川世界史』だった。
普段ならまず手に取らない本を購入している事から、その時の心中は今でもうかがい知れる。辛かったろうな、うん。
あの不思議な、忌まわしき出来事は忘れよう。
そう考えて歌舞伎町から北西に向かって歩き、大久保の公園にたどり着いた。
さっきまでは聞こえてこなかったセミのうるさい声がどこか心地よく、真夏の日差しはクッキリと網膜に焼き付けられたのぞき部屋の映像を焦がし取ってくれそうだった。


ベンチに腰を落とし、買ったばかりの本を読み進めたのだが、夕方になる頃には全てを読み終えた。よほど本の世界に逃げ込みたかったということか。
没入していたのだろう。この時に読んだ事象や言葉のいくつかはいまだに頭の中に残っている。
ここでは記憶している言葉の中で、荘子の「惠蛄(けいこ)春秋を知らず」という言葉を紹介したい。惠蛄とセミのことで、簡単に口語訳すれば「セミは春秋を知らない」という言葉だ。
セミは長い間、土の中で過ごし、夏の間だけ外に出て、夏のうちに死んでしまう。
そのため、セミは春や秋という季節を知らない。
よって、春も、秋も、冬も知らないセミにとって、夏の暑さが普通であるし、夏の情景こそがすべて。
翻って、夏しか知らないセミは夏自体を知らないというわけだ。
これを人間の人生に置き換えれば、いま自分のいる環境だけにとらわれている人は、その環境が良い環境なのか、はたまた悪い環境なのか、それすらも分からないということ。何事も外に向かって挑戦することで学びを得られるんですよ、という意味なんだそうだ。
なるほど、のぞき部屋での一件も無駄なことではなかったんだな……荘子に励まされたような気持ちになった。
なんだか伝わりづらい組み立てになってしまったものの、読書体験にとって「どんな時に」「どこで買ったか」は重要な要素なわけですよ、うん。


さて、長々と書き連ねた先にたどり着くのは競馬の予想。
週中に開催されるダートグレード競走スパーキングレディーカップで本命に推す馬はアンジュデジールに決めた。
2014世代のPOG指名馬だったぶん贔屓目に見ている面もあるものの、適距離戻りで短縮逆ショッカー気味に位置取り取れそうなのは好材料
イン2からトーコーヴィーナスをお掃除して押し切る展開が望ましいですね。もちろん今開催の川崎の傾向から逃げもベター。
中央1000万ダートで勝てるだけのタイムを持っていながらして斤量は52キロで、サクラフローラとその差3キロとなると期待は膨らむ。
あとは馬場。レース開始時までにどれくらい乾くか、内から乾くのか、外から乾くのか次第ではあるものの、さすがにパサパサに乾いた方向のタフな路面にはならないだろう、多少人気していても本命視で。

「惠蛄春秋を知らず」ってわけではないものの、この馬もかつては芝でしか走ったことがなかったが、3走前にダートでの走りを知った。ようやく見つけた自分の輝ける環境。ディープのダート馬…いいイメージは湧かないものの、新たな環境で高みを目指す走り、期待してます。