「いい文章」を書きたいと考える人のための基本的五箇条メモ

公認会計士を目指すも2年連続論述で落ちてしまっている友人と飲んでいるときに「文章の書き方を教えてくれ……長文が書けない……なんでや……」と泣きつかれたことを動機に書いてみた文章です。

 

アルバイトだった頃も含めると、編集者という仕事でお金をもらうようになって10年が経ちました。そのぶん、人の書いた文章を修正したり、自分で文章を考えたりという経験を他の人より多く積んできたと思っています。

が、いつまで経っても文章は難しいものだとつくづく感じさせられます。

悩んだ時には、書店で本を手に取ることもありますし、ウルトラサイバーサーチ(Google検索)に頼ることもままあります。ですが、いつも、どれも、しっくりこないんですよね。多数出ているハウツー本は国語の教科書的な組み立てレベルの話に終始しているか、そもそも文章とはこうあるべきで…といった観念的なものばかりですし、ウルトラサイバーサーチに頼ってみても「タイトルで言い切る!」「大見出し!中見出し!小見出し!」といった小手先の技術や表面的な見せ方の話が多くを占めている印象で、いざ困った時に頼りになる情報になかなか出会うことができません。というわけで、こう、比較的頭がスッキリしている(起床2,3時間後の)今、「そうだ俺はこうして乗り切ってきたんだ」と、これから先、自分がスランプに陥ったときに立ち返ることができるよう、これまで自分が経験を通じて身につけた文章を修正する・書くうえでの考え方を棚卸しして、実践的な方法をまとめてみようと思った次第です。

これはきっと「いい文章」を書きたいと考える人の役にも立つはず。少なくとも未来の自分の役には立つはず。

 

 

①手癖を認識しておく

「なくて七癖、あって四十八癖」という諺があるように、人は誰しも癖を持つ生き物で、文章にも人それぞれの癖があります。癖ということは「普通」とは違うところというわけで、書く文章が堅いものであればあるほど、その癖が悪い意味で目立ってしまいます。まずは自分の癖を理解すること。これまでに自分が書いた文章を読み返して、使いがちなフレーズや接続詞、慣用表現などをまとめておくと思いのほか頼りになります。

私の場合は「というわけで」を多用する癖があるので、注意し、使いどころを気をつけるようにしています。では、というわけで、次のポイントに進んでみます。

※ ブログやエッセイのような書き手の個性が好意的に捉えられる文章でも、自分の癖を認識しておくことは、その癖を自由自在に繰り出せるという意味で意義があることだと思っています。


②一貫性を持つ

閉じる(漢字にする)のか、ひらく(ひらがなにするか)のか。「」を使うのか『』を使うのか。○○さんなのか、○○氏なのか。いわゆる表記統一を意識することは、引っかかりの少ない文章をつくるうえで大切なことです。ここで重要なのは、何も『記者ハン』(記者ハンドブック= 適切な送り仮名の付け方や同訓異字や同音異義語の使い分けが例示されている用事用語集)に盲目的に従えば正解というわけではないということ。適材適所、その時々で読者層・媒体に合わせたルールをはっきりさせて、そのルールから外れないように書くことが、読み手のことを考えた気づかいのあるいい文章につながると考えています。自分の場合、ふざけた内容のものであればあるほど真面目で堅いルール設定、お堅い内容のものであればあるほどくだけたルール設定をとるよう意識しています。


③紋切り型の表現を避ける

「海のように深い」(←海の深さを見たことあるの?)

「つくってみてはいかがでしょうか?」(自分だったら本当につくる?)

など、紋切り型の表現は文章を軽薄に感じさせる最も大きな要素。慣用表現や提案の文章を1つひとつ疑って、下手でもいいので、自分自身が腑に落ちる適切な表現にすることが生々しい文章(=読み手に関心を持ってもらえる文章)につながるのだと思います。その方が後々褒められることが多い気もします。

『表現類語辞典』などを机の片隅に置いておくと役立つかもしれません。逆にWeblio辞書の類語はなるべく検索しないようにしましょう。安易な言い換えの堂々巡りに陥りがちです。きっとこれは編集者あるあるのひとつ。


④書いた文章を声に出して読み上げる

文章はリズムが大事。 いい文章はいい音楽と一緒。ところどころでブレイクが入り、流れるようなリズムがキープされるものです。自分の書きたいと考える文章がクラシックなのかヒップホップなのかEDMなのかを念頭に置いたうえで、書いた文章を声に出して読んでみると、修正すべき箇所が明け透けに立ち現れてはきませんか? 発表する媒体が紙媒体であれば、掲載されるサイズと同じ文字のQ数・1行あたりの文字数で出力したうえで読みあげると尚よし。「声に出して」読む。これが大事です。間違いなく。


⑤削って削って削る

「あってもなくてもよければないほうがよい」と3回声に出して、出来上がった文章を読み返してみましょう。よほど、一息にきれいな文章を組み立てられる人でなければ、あれよあれよと削れそうな箇所が見えてくるはず。接続詞(だから〜〜・しかし〜〜・そして〜〜等)や指示代名詞(あれ・それ・この・その等)は、削ることのできるケースがごく多い品詞なので注意深く読み返しましょう。また、この段落はまるまるいらないんじゃないか?と一度思ったら、えいやと削ってみた方が良い結果につながることが多い気がします。

肉付けを繰り返して良くなったと思えることは稀ですが、削ると本当に良くなったと実感することが多いものです。これは間違いありません。それでいながら、削ることは書くよりもずっと簡単ということがミソなのではないでしょうか。削ることの大切さを説く人が多いのは、それだけ削ることが大切だということの裏付けですね。

 

 

以上、五箇条を実行すれば、どんな文章もある程度整うんじゃないですかね、わかったかスランプに陥った俺よ! という基礎技術の棚卸し・提案でした。料理でいうと出汁の取り方、サッカーでいうところの止めて蹴る、化粧でいうところのベースメイク。文章版のそんなところ、というわけで。

細かなテクニックは経験に応じて人それぞれのものがあるでしょうが、なかでも自分が意識的に行なっていて、他の人も取り入れやすいだろうと思うことをまとめてみました。誰かの役に立てば幸甚に存じます!