地元をレペゼン(名古屋グランプリ)

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年の暮れ、こんな季節になると、地元の友人との連絡が途端に増える。

中高の同級生と連絡を取り合っては新年会の日取りを決め、地元の名物が美味い店を抑える。なんなら、そんなに仲良くなかった女の子にメールしてみたりもする。
地元の名物というと、お好み焼きとか、牡蠣とか。あと、青魚も美味い。西条の酒はもちろん美味い。
そんな自分の生まれは広島。今年はカープセ・リーグを制したこともあって、気兼ねない付き合いができる連中と旨酒を酌み交わせそうだ。
帰る場所こそ違えど、こんなことを考えてる人が都内に少なくとも10万人はいそうな気がする。つらつらと、何が言いたいかって、地元って悪いもんじゃないですよね。ってことです。


問わず語りはこの辺りで終わらせたいところだけどもう少し。自分がよく聞く音楽ジャンルの話、ヒップホップ。
一昔前は「チェケラッチョでしょ」と小馬鹿にされることしきりだったジャンルだが、USでのヒットの連発・音楽性の評価、また、ここ数年のバトルブームの影響もあって世間の風当たりは、やや優しくなってきたヒップホップ。
Disという言葉もいまや一般化した。
ヒップホップに限らず、ベースミュージックにはスラングが必ず存在する。そして、スラングが一般の人にも通じるということが、その音楽ジャンル自体の評価と関係しているんじゃないかな、なんてことを最近考えた。
EDMブームの勃興から数年を経て「エモい」という言葉も一般化したし、上にあげた「Dis」もヒップホップの流行と流れを同じくして定着してきた。
そんな最近、ヒップホップスラングにおいて「Dis」以外にも徐々に一般化してきている言葉がある。それが「レペゼン」だ。
レペゼンとは“〜〜を代表する”という意味のRepresentをカタカナに起こしたもので、ヒップホップではやたらと目にする言葉のひとつ。たしかにヒップホップの魅力のひとつには“〜〜を代表する”といった地域性がまざまざと表れるリリックにある。
川崎にはBAD HOPが、横浜にはサ上とロ吉が、名古屋にはトウカイテイオーことTOKONA-Xが、岡山には紅桜が……挙げれば枚挙に暇がないほど、日本各地に地域をレペゼンするアーティストが居て、例えばBAD HOPは「東大より高い川崎ストリートの偏差値」と自分たちが生まれ育った街のサグさを魅力に歌い、例えば紅桜は地元の榎のことを番地の無い部落として自認したうえで、そこでの生活を歌い上げる。
これは日本だけでなく、アメリカも同じでN.W.Aは西海岸を本拠地にする野球チームのキャップを被り続けて地元をレペゼンしていたし、チーフキーフは銃撃戦だらけのシカゴの街をレペゼンするかのごとく、その惨状を激しく歌っている。
そうした地域性の発露で生まれる音楽観みたいなところがヒップホップを聞く上での大きな楽しみのひとつに違いない。アーティストがレペゼンを表明することは、リスナーにとって文化を楽しむうえでの重要な切り口。
そうしたローカルの息吹こそ時代にも合っているし、何より彼らのリアルを聞くことは楽しい。


そんな「レペゼン」を競馬に落とし込んで考えると、交流重賞のことが真っ先に浮かぶ。
全日本2歳優駿の翌日に開催される名古屋グランプリにも地元をレペゼンする馬が集った。
カツゲキキトキトは泣く子も黙る名古屋の大将だし、ヴィルトグラーフは佐賀で人気実力ともにトップクラスの支持を集める馬。リワードレブロンも出戻りこそあれど、今となっては高知をレペゼンする馬と言えるだろう。
交流重賞はそれぞれの地域をレペゼンする馬とJRA勢との一騎打ちが魅力な番組だ。

そんな名古屋グランプリで俺が本命を打つのは、最内枠を引いたストロングサウザー
前走は激走後の外枠(しかも浦和の外枠)でハーツクライ産駒にとって最も厳しい臨戦過程だっただけに凡走してしまったが、3走前には小回りコースの非根幹距離でケイティブレイブに0.3秒差まで迫った馬。ポテンシャルの証明は明らかで、内枠を引けたのも好材料。前走の不甲斐ない内容から人気を落としている点も馬券を買う立場からするとありがたいと取った。

ヒップホップと同じく、ローカルの息吹を楽しみたい人間として、JRA所属で、しかも社台生産の馬を本命にすることにもやもやとした気持ちがあることはある。でも、競馬は賭事だから仕方ない。
俳優で馬主としても知られる小林薫氏は、「文化だロマンだっていったりしてさ、競馬には何かうさんくささがついて回るような気がする。ボートなんかだとシビアな博打の原理の中に身をゆだねてるっていう潔さを感じるね。ところが競馬の場合は中途半端なスタンスを取りやすいっていうか。」なんて語ってたけど、俺にとってはそんな中途半端なスタンスが取れることこそが競馬の魅力だと思ってるよ。


地元をレペゼンする馬はひとつでも上の着順を目指して頑張れ。ストロングサウザーは2着内に残るように頑張ってくださいませ、頼む。