血筋と依存症(阪神JF予想)

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日曜日の夜、クリスチャンでありながら、とびきり押しが強い彼女が言うにはこうだ。
「どれだけ悲惨な環境にいても、威厳を保ち続けられる人には敬うべきものがある。どうしようもなく、ひどい状況に耐えて尊厳を保ち、自分たちもみんなと同じ人間だということを忘れては駄目なの。」
そんなことを言われてもどうしようもない。幼い頃から競馬に勤しむ父親の後ろ姿を見て育ち、自身も中学生の内から競馬にのめり込んだM君にはキリストの洗礼を受けた彼女の清廉な言葉は刺さらなかった。
彼が日曜日に負けた額は25,000円。ギャンブル依存性のプログラムに通うM君は、その日も競馬場を経由した上でカウンセリングに向かっていた。
菊花賞では血統背景から距離が伸びて味が出ることを大いに考慮して、ハーツクライハイアーゲーム馬連・ワイドを12,500円ずつ購入。しかし、病院へ歩みを進めるうちに馬券は紙屑へと変わっていた。傷心しながらカウンセリングを終え、今とは違うデザインのキリンラガーを飲み、実家に帰って煙草に火をつけると、灰皿の中には同じ買い目で額を10倍にした馬券が破かれているのが目に入った。捨てたのは間違いなく親父だ。親父が250,000円負けていたことを知ると、自分の負け額がちっぽけなものに思えて笑えた。それにしても全く同じ買い目って。そんなところまで似るのかよ。遺伝って怖い。


日本にもカジノができるだか、そんな話からギャンブル依存症についての話題が飛び交っている2016年の暮れ。
多くの精神病と同じく、ギャンブル依存症にも遺伝が認められる可能性があることを示唆する研究の存在を知った。
ミズーリ大学の研究チームによると、家系にギャンブル依存症患者がいる場合、少なくとも20%がギャンブル依存症もしくは予備軍であるという調査結果を発表したそうだ。
血統で馬を予想する本人が、その本人の血筋によって競馬予想をさせられている場合もあるというわけだ。なんとも、落語の一席になりそうな皮肉の効いた話に思えてならない。


さて、土曜競馬を5R予想して的中0だった俺が冒頭の彼女に言われたかのごとく、威厳を保って臨む阪神JFで本命の印を落とすのはジャストザマリン。
5番人気で1着となった初戦で見せたのは、とにかく馬の若さだった。
出足は鈍い。スタートしたかと思いきや、騎手の意に反して前に行きたがる。調教でも鞍上に従いたくないのか、併せている馬に競り合おうと必死。
まさしく、父親ディープブリランテの気性の悪さを素直に受け継いだ感たっぷりな内容だったわけだが、ディープブリランテに似た部分は他にもある。
それはスピードの持続性。
新馬戦でも他馬にキレという面で劣っていながらも、長い脚を使って最後には1馬身差をつける差し切り勝ち。勝ちタイムは無視して、道中交わした3頭はいずれもその後未勝利戦を勝ち上がっており(ダート含む)、レース質は評価していいと取った。
Mの法則におけるタイプはレース内容、馬格を見る限りSが強いように思える。今回の舞台、阪神T1600mはそうした馬に相性のいいコースだし、逃げて勝ってきた馬が揃っているぶん、ペースはそこそこ流れることが想像される。そうなるとこの馬の持続性は合う、と思えるのだけど、どうだろう。キレ味よりも持続性があるタイプがこのスタミナレースで馬券になる。

世代の実力馬が揃うだけに馬券内に来る確率は近所のラーメン屋のチャーシューくらい薄いとは重々承知。現段階で単勝オッズ66.1倍はちょっと人気しすぎな気もしますが、ちょっと夢を見させてくださいよ、レースが終わるまでは。威厳を保って馬券を握りしめますんで。