俺の日々 2020年9月後半

内田百閒、吾妻ひでお、目黒孝二、大森望坪内祐三……
魅力を感じる文章の書き手が綴る「日記」が好きだ。そもそも書き手自身に魅力を感じているから日記を読んでも面白いといえば、それまでであるが、「日記」にはふつうの文章とは違った色合いが出る。というわけで、書いてみる。
webコンテンツの潮流には真っ向から逆をいくような内容である。しかし、そもそも収益化だの、えすいーおーだの、読者のためだの……そうしたことを一切考えず、好き勝手気ままに書くことが、このブログの理想的な姿だ。
またこの一連のエントリは、アルコールのせいで日々消えゆく記憶とともに生きる人間の備忘録という意味もある。

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9/16(水)
仕事キャパオーバー。逃避。宝焼酎ハイボールを1.5L。明日の自分に託す。夜、散歩ついでにブックオフで◎『オルタードカーボン』を買う。友人RからNetflixでドラマ化したことを聞き、読み返そうと思ったものの、本棚から見つけられなかったのだ。再読したかった。すぐに手をつけられるかはさておき迷わず買う。

 

9/17(木)
8時から16時まで(ほぼ)ノンストップで原稿を書く。最低限、本当に最低限の見通しが立ったところで飲酒。夜になり○『NERVE』を観る。こんなジャンル映画が無性に見たくなる日、ある。雑な話で無理やりの締め方で、記号なんてどこにも配されてなくて、それがいい。
そういえば、今日は中古で購入した製麺機が届いたのだった。ずっしり重い。いい麺を打ちたい。そして美味満腹といきたい。

 

9/18(金)
金曜日というだけで仕事に身が入らない。毎週のこと。気持ちはすでに休日に向かっている。今週に至ってはそれも四連休。当然のように身は入らない。今日やりこぼした仕事は連休のどこかで取り返せばいい。朝三暮四を地で行く。
夜、友人Tと飲み会。神保町に繰り出すために電車に乗ったのは何日ぶりか……と、この日記メモを振り返るとおよそ一週間ぶり。そんなに経っていないといえば経っていないが、経っているといえば経っている。コロナ禍以降「久々に電車に乗ったな」と実感する機会が増えた。乗っていないのだから当然のことである。
四川料理居酒屋「ハオワール」で飲み会。麻辣おでんが美味。そのあと近場のパブに流れ、痛飲。23時頃になっても営業している店がぽつぽつと出てきてありがたい。「夜の街」への風当たりの強さはなんだったのか。不思議なレッテル貼りだったと今も思う。

 

9/19(土)
今日から『TENET』が公開と話題。だが、長らくのアンチ・ノーランとして興味は湧かず。あの外連味たっぷりな演出がどうしても鼻につくのだ。
食材の調達に新宿・紀伊國屋。その後、製麺機で麺をつくる。愉快。海老のソースで美味満腹。満足。料理は比較的簡単に達成感を得られる行為として、インスタントに浄化作用を得られる。自分にとっての「禅」的な行為。いや、禅が何かなんてわかってないけど、きっと似たようなものだろう。
どん底(とも思わないが)カープも、素晴らしい大盛の(!)素晴らしい勝ち越し打で素晴らしい勝利。

 

9/20(日)
朝、外に出ると空気が冷たい。また一段階秋が深まった。半村良○『となりの宇宙人』、小松左京○『むかしばなし』、吉行淳之介○『あしたの夕刊』、山口瞳○『穴 考える人たち』、戸板康二△『少年探偵』、松本清張○『誤訳』、清武英利◎『サラリーマン球団社長』を読み、立川「IKEA」へ。「じとっこ」で友人を交えて痛飲。へべすサワーがチェーン居酒屋にあることに驚いた。

 

9/21(月)
WINS新宿で馬券を買い、新宿「やんばる」でソーキそば。やさしいスープが肝臓に滲みる。昨日買った棚を組み立てる間に馬券は外れ、先週の勝ち分をきれいに溶かす。私にとっての競馬はこの繰り返しでしかない。それでいい。夜、仲間内のオンライン飲み会。

 

9/22(火)
先週の遅れを取り戻すために終日仕事。夜、今シーズン初の鍋を食べる。楽。

 

9/23(水)
3冊分のゲラチェック。夜、初台「まことや」で茄子の煮浸しともずく。レモン氷サワー4杯と天狗のどぶろくを2杯。家に帰って宅配ピザを頼むほど陽気。翻訳小説好きの間で出版前から話題を集めていた『パチンコ』上巻を読み始める。(普段軽薄な小説を読んでばかりの自分にとっては)重い題材の上下2巻。果たして読み終えられるのか。

 

9/24(木)
勤めている会社で退職を周知。各所から届くメッセージに返信するうちに仕事に割ける時間がみるみる減る……と、仕事が進まない言い訳は湧き出るように出てくる。夜、鍋、楽。
引き続き『パチンコ』上巻を読み進める。半分ほど読んだところで傑作の匂いが……

 

9/25(金)
待ちに待った契約書が届く。サインをして返送。これでこれから一年の仕事先が見つかった。いい仕事がしたい。郵便局から帰宅後、PS5の抽選結果を確認するも、当然のごとくハズレ。
夜は明日が健康診断ということで禁酒をすることに。ノンアルコールビールでしのぎ、2020年、いや、元号が令和になって以来初めての休肝日となる。

 

9/26(土)
朝一で健康診断。これまで集団でそぞろ歩く種類のものしか受けてこなかったので、個別での接遇の良さに驚いた。医師の所見は概ね異常なし。しかし、血液検査は別とのこと。自分が一番心配しているのはそこ。肝機能の値なのだ。
健康診断を終え、即座に飲酒。以降、酒を飲みながら過ごす。『パチンコ』を読み進め、トーキョーゲームショーでセールになっていた『アンセスターズ』を購入してプレイするなど。

 

9/27(日)
朝から仕事。神戸新聞杯はコントレイルの圧勝。とはいえ菊花賞では嫌いたいというのが本音だ。子どもの頃、ディープインパクト単勝を買わない大人を「この馬に賭ければ少なからず儲かるはずなのに何故別の馬を買うのか……」と思っていたが、自分がそちら側の人間になろうとは。

 

9/28(月)
久々の晴天。ここぞとばかりに日光を浴びる。在職中の仕事に目処をつけた。爽快。◎『パチンコ』上巻を読み終える。凄みを感じさせる血の物語。感想を残しておきたい。

残した。

 

9/29(火)
仕事の引き継ぎもろもろをそこそこに終えて飲酒。夜は初台の「まことや」へ。もずく、ハツ、タン、上タン、ハラミ、ハツ、レモン氷サワー4杯、天狗のどぶろく1杯。えらく酔ってしまう。『パチンコ』は下巻もつくづく素晴らしい。

 

9/30(水)
朝、健康診断の結果を受け取りに病院。心配していた肝機能、γ-gtpの数値が基準値オーバーの125。別の肝機能の数値も悪かった。「知ったこっちゃねえ」「いやあそんなに悪くなってるのか」「そこまで悪い数値なのかね」……アンビバレントに気持ちが揺れる。つまり、自分の不健康さをまざまざと突きつけられて、くらっている。これは休肝日を設けるべきなのかもしれない。夜、退職挨拶のお菓子を買いに新宿小田急。ケチくさい貧乏人なので、3,000円程度の出費ながらえらく引きずる。鬱憤を晴らすかのように小滝橋の「ラーメン二郎」へ。美味満腹。