俺の日々 2020年11月前半

内田百閒、吾妻ひでお、目黒孝二、大森望坪内祐三……
魅力を感じる文章の書き手が綴る「日記」が好きだ。そもそも書き手自身に魅力を感じているから日記を読んでも面白いといえば、それまでであるが、「日記」にはふつうの文章とは違った色合いが出る。というわけで、書いてみる。
webコンテンツの潮流には真っ向から逆をいくような内容である。しかし、そもそも収益化だの、えすいーおーだの、読者のためだの……そうしたことを一切考えず、好き勝手気ままに書くことが、このブログの理想的な姿だ。
またこの一連のエントリは、アルコールのせいで日々消えゆく記憶とともに生きる人間の備忘録という意味もある。

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11月1日(日)
朝飯、松屋。インド系の男性が新宿駅東南口の店舗でワンオペ。カウンターのお盆がまったく片付けられておらず、やるせない気持ちになる。松屋でよく遭遇する(気がするが、それはそもそも自分が牛丼チェーンで松屋にしか行かないからというのが大きな理由)それ。
10時前の新幹線で出張・石川県へ。道中は上司の子ども(4歳)に恐竜図鑑を<censored>見せられながら</censored>見せてもらいながら、諸知識を教え込まれる。金沢駅に到着後、レンタカーを一時間ほど走らせ崎山地区(能登半島の北西部)へ。
到着すぐ地元の町長4人と会談。今日から約一週間このエリアを取材することになる。
飲食店もなければコンビニもなく、経済の匂いがまったくしない地区。よくいえば秘境。よくいえば無何有の郷。悪くいえばど田舎。
半ばワーケーション。ネタを探しながらの取材となるが、果たして記事になるような何かはあるのか、そして自分が書けるような何かはあるのか……仕事においては不安のみ。

 

11月2日(月)
岡町を取材。町内会の方に昼飯を振舞ってもらう。今日獲れのヒラマサの刺身が筆舌に尽くしがたい美味。美味。美味。
その後、能登島水族館へ行き、夜は某生物ライターさんと合流後七尾の「海ぼうず」で酒席。日本酒を3合ほど。東京で暮らしていると、まず乗る機会のない代行(!)で宿へと戻る。
書き忘れていた。宿は崎山地区唯一の民宿「龍王閣」。初めて“泉質”なる言葉の意味を思い知る。


11月3日(火)
昼前まで一人宿に残ってメール打ち返し。そこから車で移動。今日の民宿は能登半島の「石坂荘」。量がすごくて食べきれず。滞在してからというもの、私が少食だということを鑑みても、一食あたりの量がとてつもなく多い。ありがたくもあり、申し訳なくもある。
申し訳なさといえば、私は免許を持っていない。つまり常に上司のどちらかが運転することとなる。肩身が狭い。申し訳ない。


11月4日(水)
朝から刺し網漁の見学。なかなかに残酷な漁法に思えるが、コウイカ、マダコ、イシガニ、その他もろもろが獲れるわ獲れる。獲った魚・貝をその場で調理。塩水に浸して炙ったコウイカが抜群に美味だった。日本酒が飲めればいうことはなかったが……一応仕事というわけで……
それにしても海は観光資源としてデカい。レッドオーシャンではあるけど間違いなくデカい。
龍王閣」に戻って晩飯。酒無し。凹む。明日早朝(深夜)からの漁同行に向けて早寝。


11月5日(木)
3時からの漁のために2時起床。寝ぼけ眼で漁場に着くと…THE漁船!思わずテンションが上がり、カメラマン同行にもかかわらずiPhoneで写真を撮りまくる。船酔いでほのかに気持ち悪くなりながらも大失態(吐瀉)はさらすことなく無事帰港。もしも昨日酒を飲んでいたらと思うと恐ろしい。
選別すると、アオリイカ、マメアジ、ウスバハギ、エイ、カマス……あらゆる魚種が豊漁も豊漁。ペンディングしている日常仕事から心を逸らしながら、飯場で調理してもらったそれらをいただく。なかでも美味かったのがウスバハギの肝に浸して食べる刺身。あらゆる魚を潮(?)で煮込んだ漁師汁も極めて美味。日本酒がここにあればどれだけ幸せなことだったか……
ちなみに今日は石川県を訪れて初めての晴天。これまでは毎日雨だった。北陸の天気は変わりやすいと頭ではわかっていたが、視界の左半分が曇っていて、右半分が晴れているというような光景が眼前に広がる日もあったのには驚いた。これほどまでとは……恐るべし北陸地方……さすがの自殺率の高さ……一度も雨に降られないだけで幸せを噛み締める。
夜、石川に来て初めてというレベルでしっかり飲んだ。ツマミは朝乗った漁船の社長が用意してくれた刺身。たまらん。

 

11月6日(金)
4時から釣りの予定が、同行している上司の子どもが起きず……ずるずる6時からの釣行に。仕方なし。その後小松へ移動。取材を終えて仕事終了。翌日からの予定に備えて福井駅へ移動し、酒、酒、酒。「善甚」で日本酒を3杯。コップ+升の二段状態で提供されるスタイルは多く見られるも、この店はなんとコップ+受け皿×2の三段スタイル。感動した。
ホテル近くの洒落たバーに駆け込み泥酔。

 

11月7日(土)
サンダーバードで福井から金沢へ移動し帰京。大量の土産を買い込む。これは僕にとっては珍しいことで、きっと滞在日数の長さ、つまり土地への愛着が購買意欲をかき立てたのだろうと思う。アオリイカ、いしる、もずく、ホタルイカ、箸、豆皿……ノドグロも買おうとしたが、あまりに高くて諦めた。

 

11月8日(日)
昼過ぎから前職の同僚(女性2名…男子校育ちの十字架を背負い続けるメンタリティの私にとってはかなり貴重なケース)と酒。楽しく飲むも、企画的な収穫はなし……と、なんでもかんでも仕事に結びつけようとする自分に嫌気が差す。
帰路、疲労が溜まっていたのか副都心線で5時間爆睡。クラブ帰りか。

 

11月9日(月)
発熱。されど出張中に溜め込んだ仕事は片付けねばならず。朦朧としながら机に向かう。4000字の原稿一本が限界。

 

11月10日(火)
体調はやや改善。市販薬で充分効く。底は抜け出した。昼から一本打ち合わせ。Twitterで見知った人だったが、イメージに違わず。

 

11月11日(水)
今日も今日とて出張中に溜まった仕事を片付ける。風邪は咳と喉の違和感が残る。体調は芳しくないものの「まあいいか」と初台「まことや」へ。ハムカツとレモン氷サワー×3。

 

11月12日(木)
仕事。会議。アイデア出ず自己嫌悪。夜、前職の同僚であり、いまは神保町の出版社に勤めるTと神保町駅構内のうどん屋へ。近況報告。

 

11月13日(金)
「お土産あるから」と伝えた友人が家まで受け取りに。久々に会ったので酒を飲むことになり、初台「まことや」でレモン氷サワー。思い出せないほど飲んでしまう。

 

11月14日(土)
内臓がしんどいタイプの二日酔いで昼過ぎまで動けず。なんとか購入した馬券はすべてハズレ。抵抗すらできずあっさり5000円を失う。夜、なんとか回復したところで、途端に外出意欲が湧く。周りからしきりに勧められる「カズチー」(数の子とチーズを掛け合わせたつまみ菓子)を求めに笹塚KALDIへ向かった。ものの、コロナの影響で時短営業。とぼとぼ帰宅。「ウォッチドッグスレギオン 」のメインミッションを終える。(大好きな)2に比べて、現実と地続きなテクノロジーの脅威という面でリアリティに欠けるぶん、面白みも落ちていた印象。NPCを誰でも仲間にできる画期的なシステムも自分にはハマらず。期待していただけに残念。

 

11月15日(日)
ようやく風邪から復活。歳を重ねると体調の復活が遅くなるというよくある伝え聞きを身をもって実感する。昼は「ラーメン二郎小滝橋店」で小ラーメン。その後、取材原稿のまとめ仕事をしようとするも、重い腰が上がらず、明日の早朝に先延ばし。馬券は須く外した。


書き忘れていた11月前半に読んだ本のリストをメモ。○『沢村忠に真空を飛ばせた男』、○『すばらしい新世界』(再読)、○『アメリカン・ブッダ』、△『たった一人の30年戦争』、△『貧乏国ニッポン』、△『その言い方は「失礼」です!』○『Z世代』、△『山本太郎とN国党』、△『スマホ脳』、○『毒親と絶縁する』、△『絶対に挫折しない日本史』……仕事絡みの本がほとんど。はてさて、そろそろ普通のブログも更新したい次第。そんな気分です。