那須川天心のメイウェザー戦を見て思ったこと

日本格闘技界の期待を一心に背負わされた那須川天心フロイド・メイウェザーにあっけなく負けた。

勝利を追求するための狡猾さも、対策を重ね続けたであろう作戦の数々もまったく披露できず、まさしく「赤子の手をひねるように」リング上に倒された。

「日本人」が一方的な内容で負けて迎える新年に、ほぞを噛む思いで打ち込んだであろう諦念の感想をツイッターでよく目にしたが、自分の場合、那須川選手に羨ましいような思いを感じながらその敗退を見ていた。

「敗北」と呼べるほど立派ではない未達感と「勝利」と呼べるほど立派でない達成感の間をぼんやりと行き来し続けるように日々を過ごす私にとって、あの清々しいほどのやられっぷり、周りの目を一切憚ることのない号泣ぶりにシビアな世界に生きる男のかっこよさが詰まっていたのだ。

これだけでも「良いものを見ることができた」と思える一戦だったが、その思いをより強くさせられたのが那須川選手の試合後のコメント。

「無謀だと言われた挑戦でした。結果は倒されてしまいましたが後悔はしてません」とツイートし、「自分の20年間でもメイウェザー選手に届かなかった けれど勇気を持って前に出続けました メイウェザー選手、応援してくれた皆さん、ありがとうございました 思いは形に出来なかったけれど 僕はこれからも挑戦し続けます」と続けた。

敗戦について「申し訳ない」とコメントしないところが素晴らしい。いい意味で若くて勢いのあるところが表れている。並の選手なら応援してくれたファン、スタッフ、興行主の期待を背負ってあのリングに立つところを、那須川天心という男はただただ自分のためにリングに立っていたのだと受け取った。

人が謝罪する姿を過剰に見せられた2018年の最後に弱冠20歳の青年が、自分のこれまでを賭して、日本格闘技のためでなく、ただただ自分のために闘いに臨んだ姿を見れて気づかされることが少なくなかった。負け戦にこそ見るべきものは多いのかもしれない。