競馬に負けて財布をふくらませた件(あとで返すよ)

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*画像はインターネットから拝借

 

 特別、PCに強いというわけではないけど、部署の中で1番若い男だからか、会社でPCトラブルがあると真っ先に声をかけられる。大体基本的なことをたまーに質問されるだけだから、都度デスクまで出向いて、答えているものの、雇用延長中の大先輩からの質問はすごい、その量が。平均して1日に3回ペース。週に1度は「添付ってどうやるんだっけ?」と聞いてくる。そりゃあ、これまで紙とペンだけで仕事をしてきた人なわけで、PC操作がおぼつかないのは仕方ないけど、せめて覚えようとしてくれよ……と思っていたところ、事件が起きた。その先輩が隠れて進めていた、競合他社との間の個人仕事に関するメールを、何をどうしてか、社内に一斉送信してしまったのだ。

「そんなことする?! 気づくでしょ?!」

ということを平気で起こすから、本当に怖い。高齢者のデジタル機器操作 = これまでの自分の実績におごって、新しい技術を取り入れようとせず、その結果痛い目にあうこと。まるで、三浦の騎乗技術みたいな……って、俺の愚痴、というか前フリは、このあたりで終了。ここからが本題。

 

 皆さん、両替屋って知ってますか?

 JRAや南関各場、それぞれで払い戻しが行われていないタイミングでも、的中馬券を渡せば、その場で払い戻しをしてくれる両替屋。配当の一部、だいたい5%くらいを手数料として差し引かれるものの、両替屋に助けられたことが何度かある。

 菊花賞でスカイディグニティの単勝に全てを突っ込んで、財布の中にも口座の中にも現金が無くなってしまった二十歳の誕生日2日前。“二十歳を迎えるというのに、俺は何をしてるんだ…こんな大人になるはずじゃなかったんだけどな……”と思いながら、渋谷中のデパートの酒売り場を周って試飲に明け暮れようとしているとき、初めてあの文字を目にした。

“大井、川崎、浦和、船橋 両替できます”

 いや、文字が輝いて見えたね。村上春樹よりも、ドストエフスキーよりも、なんならピンチョンよりも……誰が書く文章よりも、その文章は美しく見えた。明日にならなければ換金できないと思っていた2.2倍の単勝、御神本だから大丈夫だろうと購入した10,000円分の馬券を即座に取り出して換金。20,000円の払い戻しを両替屋から受け取って、スーパードライを1ケース買って帰った。なんなら、誕生日には飲み屋(渋谷の富士屋)にも行けた。

 それ以降も、なにかと両替屋にはお世話になっている。IPATをはじめとしたインターネット投票サービスに加入していない自分としては、仕事の合間にオフト後楽園で購入した馬券を換金するためだけに、また後楽園まで出向くのは面倒だし、それなら手数料を払ってでも、新宿・渋谷の両替屋に払い戻しを頼む。なんてったって、風情がいい。“押し引き”しているかのような雰囲気で馬券を差し出し、現金を受け取り、周りにはしたり顔。

両替屋のおばちゃんからは、

「おー、兄ちゃん、これよく取れたね。うまい!」

と、お褒めの声をかけられ、

その周りを取り巻くいかにもなおじさんからは、

「この馬に単勝1,000円なんて、よっぽど自信あったってことだよな、な。」

と、悔し紛れの冷やかしが入り混じった褒めを浴びせられ、

さらにその周りの“馬券買う金持ってるんですか?”というルックスのおじさんからは、

「タバコちょうだい」

と、声をかけられる。

新宿・渋谷どっちでもそんな感じ。繁華街に居ながらして、この場末感が味わえる。石原慎太郎もここまでは浄化できなかったな、と思うと気分がいい。

 

 つい最近もローズミラクルにがっつりと財布の中身を搾り取られた直後、12レースに向けて種銭を増やそうと、川崎競馬2枠2番単勝4.5倍、1,000円分の単勝馬券を財布から取り出して、両替屋に駆け込んだ。

俺「ちょっと前のなんすけど、まだ大丈夫だよね?」

両替屋「いつの? あー、3週間前だったら、全然大丈夫よ、貸して」

そう言って、俺の手から馬券をふんだくったおばちゃんは、配当を調べる。しかし、なかなか見つからないようだ。お手製のファイルを右から左から、繰り返しめくるものの、該当するレースはなかなか見つからず、結局、携帯電話を取り出して、配当確認サイトを開く。ここで、俺は気づいた。

 出たぞ、高齢者のデジタル機器操作。

両替屋「えーっと、6月の開催、よね。7レース、っと。あー、あったあった。単勝が…えーっと、2…2…2,450円ね!」

俺「…………(やべー、このおばちゃん単勝2 450円っていう画面の表示を“2番 450円”じゃなくて、2,450円って勘違いしてんのかな?)」

取り巻き「おー、よく取れたな!!!」

俺「いや、あ、ありがとうございます……(おいおい、これは今さら言い出しづらいぞ……)」

両替屋「はい、じゃあ手数料抜いて、23,000円ね!はい!」

 嘘でしょ?!このまま気づかずに終わりですか?!

ありがたいけど、さすがにこれはまずいよな……でも、言い出しづれーな……と思って、とりあえず12Rを買ったら、見事に外しました。あちゃーと思って、金を返しに行ったら、そこからおばちゃんはもういなくなってた。来週にでも返しておこう。

 

 ちなみに、その金で『シン・ゴジラ』を友だちと観ようとしたけど、どこも満員で入れなかったんで、仕方なしに観た『インデペンデンス・デイ リサージェンス』は今世紀一面白くなかったです。ハリウッド版『ドラゴンボール』の方が面白かった。マジで。