老い方の変化(スプリンターズS予想)

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夏競馬が終わり、スプリンターズステークスが開催される頃には、蝉の鳴き声がコオロギに変わり、寝室のクーラーは役目を終え、昼間に外で飲むビールがちょっとだけ美味しくなくなって、夜路を歩いていると熱燗が欲しくなってくる。
なんとも秋。といった具合ですね。
季節の変わり目ということもあって、身体だったり心だったりを崩す人が増えてくる頃ですが、このブログを読んでくださっている奇特な思考の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。


夏競馬を終えて、印象に残ったのは3歳牡馬が古馬相手にほとんど通用しなかったことが大きい。具体的な数字を持ち合わせていないものの、例年に比べてかなり悲惨な戦績に終わってしまったように感じるし、多分その感覚は間違いない。
その一方で活躍が目立ったのは高齢馬だった。
キーンランドCでのエポワスの激走は記憶に新しいし、昨日開催されたシリウスSのメイショウスミトモだって6歳の牡馬。初老といっても差し支えない馬齢だろう。
世代レベルは競馬予想において重要な要素のひとつなので、日常生活に比べて、年齢を気にする機会が多いものの、年寄りが元気なのはなにも競走馬の世界だけではない。
現実世界の年寄りも極めて元気だ。


昼ドラ『やすらぎの郷』では石坂浩二が女子大生にデレデレのメールを送っては一喜一憂するし、バイアグラ100ml男なんてのもそういえば話題になった。国会議員もいい年して女を宿舎にあげたりなんだり、いやまあ、そんな時代なんですかね。
一昔前の"お爺ちゃん像"といえば、戦争体験世代だからなのか、我慢と団結がクオリティ・オブ・ライフの向上より優先!
そんな風だったけど、今はどうやら様変わりしてしまっているようですね、なんて、ふわっとそんなことを感じながら、書店で見かけた雑誌を手にとった時、老人の変容について、印象が確信に変わった。


雑誌のタイトルは『GG』。
ジジと読むらしいこの雑誌は表紙の見出しからすごい。
「金は遺すな、自分で使え!」
「ハゲに勝つ!」
「大切なのは飛ばす距離よりふたりの距離」
ちょい不良(ワル)温泉物語」
このレベルのパンチラインが(他の雑誌よりもQ数デカめの文字で)どかどかと並ぶ。
クラクラしながらページを手繰ってみると、レストラン紹介のコーナーでは女性の口説き方が事細かに説明されていて
「牛肉の部位を覚えておくのもかなり効果的。たとえば一緒に焼き肉を食べに行ったとき「ミスジってどこ?」と聞かれたら、「キミだったらこの辺かな」と肩の後ろあたりをツンツン。「イチボは?」と聞かれたらしめたもの。お尻をツンツンできますから(笑い)」と来たもんだ。
雑誌名の意味はといえば、"シルバー世代を突き抜けたGolden Generationのためのライフスタイル誌"だという。
ここまでくると、お見それしました。という感想以外にない。
なんというか、自分に欠けているギラギラとした欲望がすごいんですよね。
よく考えてみたらいまの60代って戦争経験世代なわけなくて、なんならバブル経験世代なんですもんね。そりゃ世の中の老人像も変わっていきますわ。


スプリンターズSで本命に据える馬も言ってしまえば初老の馬。ラインミーティアに重い印を落とすことに決めた。
例年に比べて小粒なメンバーばかりで積極的に買いたい馬がおらず、実績上位のビッグアーサーはばったばたの調教内容に加えて前脚はJ鉄使用と買える状態になさそう。
とくれば、あからさまに馬が変わったラインミーティアを信じてみたい。
前走負けてくれたのもある程度ストレスから解放されたぶんプラス。母父オースの内枠アップという臨戦も好都合。
内が伸びることは間違いないし、各人馬が殺到するだろうから詰まってしまう心配こそあれど、前走で仕掛けのタイミングをミスして前が壁になったことを悔いている西田の経験が活きるとしたら、ここだと思うし、そこまでマイナスに取る必要もないのかな、と。


日本の老人が戦争経験世代からバブル経験世代に変わったことで、思い描かれる老人像がアップデートされたように、競走馬も調教方法・ローテーションが変わったたことで、馬齢ごとの競走成績もアップデートされているような昨今。
苦労人の西田とラインミーティアが栄冠を手にするなんていう絵を描く。年寄りの力を見せつける。
たまにはそういう出来すぎた話も悪くないと思うけどな、うん。

空き巣の逮捕と呼び込み(神戸新聞杯予想)

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年初に被害に遭っていた空き巣は犯人が捕まり、検事まで送られたらしく、なんとか終結しそう。
あとは示談金が振り込まれるかどうかを残すのみで……そこが一番肝心なところですね……

関連して東京地検まで取り調べを受けに行ったのですが、そこで聞いた話から今回のエントリを更新。
というのも、逮捕に至ったきっかけが刑事の張り込みによるものだったそうで。
不謹慎かつ物が失くなった手前、こんなことを書くのはどうかしてるけど、刑事ドラマみたいでちょっとテンションがあがった。
張り込みって!
いや、どうやって張り込みをしていたのか。
気になって掘り下げて聞いてみると「呼び込みまでして張ってたらしいから結構本腰入れて捜査してくれてたみたいだよ、感謝しなきゃね」という返事が返ってきた。


はて呼び込みとは。
キャバクラで12万円ぼったくられた。
財布に金がないから払えないことを伝える。
怖いお兄さんに一緒にコンビニATMまで連れて行かされる。
そんな嫌な目にあわせてくる“呼び込み”しか知らない自分は続けて質問を投げかけてみる。
すると「どこにいるんだ。」「捕まえてやるからな。」などと、ターゲットの写真を凝視しながら声をかけることで、相手の顔を心に刻みつけて、雑踏の中でも犯人を見つけられるようにする作業のことを警察内の用語で呼び込み、ということを教えてくれた。


いまやIoTやらAIやら、東京五輪でも警備のために顔認証性能が優れたカメラを取り入れるという時代にそんな作業を行うのか、というのが正直な感想だった。
容貌から本人の特定はもちろん、病気や性格がわかるケースもあるとかいう研究結果もアメリカの研究者が出すような時代。
イギリスや中国では監視(カメラ)社会をさらに推進させていくという時代に人力による“呼び込み”ですか、はて。


とはいえ、ターゲットの写真を凝視しながら、声をかけることで、印象を深く刻み込むという、そんな手法が結局犯人逮捕にまでつながったのだから、感謝するほかない。
少なくともこれから数年は、機械の性能よりも百戦錬磨の経験に裏打ちされた人間の力が成果につながっていくのかもしれないな、なんてことを考えたり。
いやまあ、どうだっていいから示談金を早く振り込んでほしいところですけどね、ええ。


さて、今週末開催のトライアル、神戸新聞杯で本命に据えるのはキセキに決めた。
後ろ暗さに囲まれて生活する自分にとってキセキだとかキズナだとか、そうした名前の馬はどうも無意識的に嫌ってしまう向きがあるものの、信濃川特別はペース向いた面もあるがタイムは優秀。2走前はあっさり500万勝ちするスズカディープが支配する競馬をきっちりねじ伏せてますし、休養挟んでストレスからも解放。適度に前が流れそうなメンバーで瞬発力勝負になれば、と最上位で拾うこととしました。対抗はもちろん権利取りの神様ダンビュライト。あとはアダムバローズまで抑える馬券で週末の飲み会資金を確保する所存です。


まあ本番は菊花賞な訳ですし、ここでは無理にバットを長く持たずに、馬の走りを凝視しながら、声をかけることで、印象を深く刻み込むという、呼び込みの手法で乗り切りたいと思います。
終始後方待機している自分の本命馬を見ながら
「どこにいるんだ。」「捕まえてやるからな。」
などと悶々とつぶやかないようにしたいもんです。

言い訳(京成杯AH予想)

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自分の使っているテキストエディターは画面の左側に最近開いたファイルが表示される形式のもので、ここのところそこには[示談書_草案.txt]だとか、[示談書_草案+.txt]だとか、[示談書_確認用.txt]だとか、[公正証書化_確.txt]だとか、禍々しいファイル名がずらりと並んでいる。
空き巣被害に遭った際の犯人から示談の申し出があったからである。行政書士という一体何をやっているのかわからないが、なんだか賢そうな仕事に就いている友達に文章の中身が問題ないのかを都度確認してもらっているうちにそんなことになってしまった。
禍々しいファイル名が目に入るから、かどうかはわからないものの、テキストエディタを立ち上げても気持ちよく文章を書く気になかなかなれないし、うまくオチをつけられる気もしない。
その証拠にここまでの一連の話にもオチはない。
一応毎週更新を続けているブログの更新を怠った先週の言い訳がしたかったぐらいだ。


その言い訳のために404文字、原稿用紙1枚分を超す文字量を費やしてしまった。
とはいえ、言い訳なんてつらつらつらつらと長く無意味なことを連ねるのが常なわけで、そういう意味では正しい言い訳になっているともいえよう。


「あちゃー!和田じゃなくて大知が乗ってるから和田に捨てられた馬だと思って切っちゃったけど、これマイネルじゃねえか!なーんで俺はメリオラなんて買ってるんだよ!あちゃー!わざわざ3鞍だけ乗るために意味もなく大知が関西に乗りにくるわけねえじゃねえか!あちゃー失敗した!ここ狙いすましてだったんだよちくしょー!いやー!ちょこ…っと考えれば見抜けたのに!なー!ちくしょー!もう1レースあるからそれまでチャレンジさせてくれ!」
昨日の中山競馬場でもこんなおじさんを見かけた。煙草を吸い続けている間、奥様と思しき女性に5分間、語尾やニュアンスを変えながら、語りかけ続けていた。
たしかにその政治的な見立てはわかる。「俺も馬券外したときにそう思ったよ。なんなら本命馬も一緒だし、うん、わかる、わかるよ。最終レース頑張ろうな」と心の中で相槌を打った。


「ったく!なんだよ!八百長だったなこれ!な!丹内なんか買うんじゃなかったよ!丹内じゃ足んないんだよなー!丹内じゃ足んない!がはは!」
昨日の中山競馬場ではこんなおじさんも見かけた。最終レースを外して船橋法典駅へと向かう地下道で連れのおじいさんの肩を叩きたながら陽気に渾身のギャグを繰り返していた。
その言い訳は無茶がある。「まあ久々の競馬場、楽しけりゃよしなところもあるんだろうな」そう心の中で相槌を打った。


どちらも早口で、ものすごい文字量を瞬時のうちに口から飛ばし続けていた。口角泡を飛ばすとはまさしくこのこと。
つらつらつらつらと無意味なことを並べる正しい言い訳の姿がそこにはあった。馬券は負けてしまったものの楽しい気分をいただいた。
競馬場に居ると、場外馬券場で馬券を買っている時に比べて言い訳が多く聞こえてくるような気がしないだろうか。
環境音の大きさに負けないように声を張るからなのか、理由こそわからないものの、経験上間違いない。
そして、そんな言い訳に遭遇するのも自分にとっての競馬の楽しみになっていることも間違いない。

理路整然とした言い訳も支離滅裂な言い訳も、そのどちらもが不的中によって吐き出されるもので、負けたときに「負けた」の一言で済ませることができない、感情を揺さぶる何かが競馬にあることを再確認させてくれるのがその理由だろうか。
どんなに馬券が上手い人でも競馬は短期間の負けから逃れることはできないから、負けの気持ちを少しでも和らげることに慣れていて、そこで魅せる美しい受け身のような言葉遊びの芸術点を楽しんでいるからだろうか。
理由こそはっきりとはしないものの、言い訳を聞けるのは現地競馬のひとつの楽しみだ。
いやー言い訳っていいもんですね。
ってことで先週の更新を飛ばしたのも良いじゃないですか!
ここまで言い訳してるんですから!


さて、今週開催される京成杯オータムハンデはボンセルヴィーソから入る。
間隔あけて蓄積疲労から開放、古馬混合重賞初で鮮度もあって実績もある。枠も(逃げるor番手で進めてくれるなら)いい枠を拾った。昨日の馬場を考えても内目をロスなく進めるのがベストなのは明白で、予想されうる展開から馬場も向く。中山は1回走って3着と微妙な戦績ですが、2馬身出遅れてのものですし、本質的に中山は良いはずで。1400ベストなイメージでいますが、いまの中山の馬場はアスター賞でソイルトゥザソウルが2着できる馬場なんで、その分足りてくれるでしょう……
なんともどこから入っていいのか悩ましいメンバーの中でこの程度の人気ならここから穴目にワイドで流す方向で。

 

当たるかどうかはさておき、外した時の言い訳する準備はばっちりできてますんで。
現地競馬の楽しみをインターネットから微量ながら、僭越ながらお届けさせていただきますんで(明日も更新するつもりです

待ちに待った果ての(新潟2歳S予想)

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動画広告が世間を賑わせている。
サントリーの頂だとか、宮城県観光PRの壇蜜だとか、あとはなんだ、牛乳石鹸とか?
見ている一部の方々は、個人の不快感→結束→炎上というのがお決まりの流れで、毎度のごとくPCを振りかざした偽善者が反対勢力となり、血気盛んに集っている。気味が悪い。思わず誰かが言っていた「ネットは陰性感情を増幅させる装置」という発言を思い返した。
企業・自治体も炎上による拡散を狙っているフシがあって、動画広告の界隈はほんと「踊る阿呆と踊らぬ阿呆、それはつまりどっちも阿呆」みたいな状況に見えて仕方ない。
代理店の人間もクライアントの人間も「バズ」らせるために、過激な演出を加えて、それを見つけたユーザーが炎上させるというなんともハイプ極まれり!みたいな構造でなんとも……
ってジジイの説教が書きたいわけではない。
いいなと思った動画広告の話から筆を進めたい。筆じゃなくてキーボード、でもなくてiPhoneのタッチスクリーン……


ドコモの『25年前の夏』はウェルメイドな広告だった。
カップルがともに過ごしてきた25年という時間を、彼らと彼らの娘の視線を通しつつ、その時々に流行していた携帯を小道具に物語を展開させる内容で一度は目にしているだろう。
そして、昔、携帯を持ってなかった頃の付き合いから記憶を遡ってみたはずだ。
…約束の場所に早めに到着して彼女を待つ。
電車から降りてくる姿を、一枚の絵のように想像しながら。
とはいえ、彼女はなかなか降りてこない。
次の電車からも、その次の電車からも、なかなか彼女は降りてこない。
心配が段々とイライラに変わり、彼女の想いが疑わしくなってくる。
そうするうちに彼女は到着。
なんてことない到着ですら奇跡のように感じられた、うん。
"遅れたことのたわいのない原因を説明する彼女は、なんと美しく、魅力に満ちていることか"
気持ちを揺さぶるような「待つ」文化がたしかにそこにはあった。
って四方田犬彦のエッセイが紹介されたコラムを引用しつつ、ジジイの思い出与太話が書きたいわけではない。


時間もない(し、筆….じゃなくてキーボード……じゃなくて……タッチスクリーンが進まない)ので本題。新潟2歳Sの予想。本命はグランデウィーク。
スペシャルウィーク×stormcatのいわゆるマルゼンスキー相似クロスで父系がスペシャルだろうとこんなの早熟マイラーほぼ確定案件(しかもかなりstormcat出ててなおさらその可能性)なんだから3歳春まではマイルでベタ買いで仕方ない。
初戦も不利で外に振られながら直線は抜きつつ辛勝。どの馬よりも強い競馬を見せた。もともとグランデ牧場がトレーニングセールで4800万円という異常価格での台付を設定した時点で、生産側の期待が見て取れる。まあそりゃそうですよね。2歳の早い段階から11秒台刻んでるんですもん…というわけで新潟の脚力勝負にも不安視なし。
唯一にして最大の不安材料は中間のザ石だが、そこはまあ出走するということで…なんとか……
本音をいえば東スポ杯2歳Sまで待ってほしかった気持ちもあるけど、レース選択に関与できるはずもないですしね。
陣営に不満がないと言い切れこそしないものの長く楽しみにしていた一戦。
待ちに待った果てに訪れる歓喜の瞬間に立ち会いたい、あの頃、彼女が電車から降りて現れた時のように、ねえ。

 

偉大な父の死(札幌記念予想)

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ブログに書こうか書くまいか。ずっともやもや悩んでいたことがありまして。
もったいぶらずに書くと映画監督のジョージ・A・ロメロが亡くなったことについてなんですけどね。なんだかブログのひとつのネタのように、このトピックを扱うことに気が引けてしまうというかなんというか。とはいえ、彼の死後に自分が抱いた感覚は包み隠さず書いて残しておきたいみたいな気持ちもあって。
書こうか、書くまいか、そうぼんやりと考えていたなかで観た『ナイトオブザリビングデッド』が改めて素晴らしかったので書くことに決めました。
文章の組み立てとして競馬予想に繋がるのかオチがつくのかどうかは謎。手グセで安易に紐づけたりしちゃいそうだけど、まあそれはそれで。肩の力抜いて素直に書くのが今回一番やりたいこと。そうすることで定型文的な哀悼をつらつら書き連ねないようにしたいみたいな思いもある。


そう、ゾンビ映画の父ジョージ・A・ロメロが7月16日に77年間の生涯を終えたんですよね。いつも楽しげに次回作の構想を喋る大男がいつの間にやら老衰して、病に冒されて亡くなったんですよね。
「著名人が死んだくらいで大げさに沈痛な面持ちキメこむんじゃねえよ!」と自分自身に突っ込みたくなる気持ちもなくはない。年を重ねるにつれ、直接親交のあった人だとか、昔からよく知っている芸能人だとか、いろんな人の死に直面するし、人間誰しもいつかは亡くなることなんて当たり前ですしね。安易にR.I.Pとか言いたかないですしね。
ただ、ロメロの死は想像以上にくらった、ほんとに。
朝起きて何気なしにTwitterのタイムラインを眺めていたら、訃報が流れてきてそのまま結構なボリュームで「え?!」って声が出た。ここのところ体調を崩してるということは知っていたし年齢も年齢。ね、わかってはいるはずなんだけど、ぼーっとしちゃって、吸ってたタバコの火種を足に落として火傷なんかしちゃったりして。
昼間には仕事仲間から「今晩集まってみんなでロメロ観ようと思うんだけど来る?」というお誘いもあったんだけど、なぜか断ってしまって。多分まだ自分の中でロメロが死んだということがよくわからなかったからだと思う。
死によって存在を改めて確認してその偉大さに気づかされる、という当たり前の作業に本当に時間がかかった。なんてったってロメロは自分にとって、いつもそこに存在した人で偉大さをヒシヒシと感じさせられる人物だったからだと今は思う、うん。


そんな彼の代表作『ナイトオブザリビングデッド』がシネマカリテで追悼上映されるということで、迷わず足を運んだんですよね。
スクリーンで観るのは実は初めてだったんですが、そりゃまあわかってたとおり、傑作で。
ゾンビを描きながらも、実際にロメロが向けている視線は、ゾンビの登場によってこれほどまでに歪みあうか! という人間同士の浅ましさなわけで、なんというか、アメリカがほんと冗談キツいっすよみたいな状況になってるのも笑えないというか。
俺たちの敵はすぐ近くにいる他人との差異なんじゃなくて、その差異を寛容して状況を改善させることができない(させようとも努めない)精神の方なんだよという当たり前の道徳をゾンビとの対峙によって起こる不道徳を通じて再度教えられましたね、ええ。
50年の時を経ても古さが一切なくて、現代社会にまで通じる風刺で一言お見事。薀蓄をつらつらと語ることが憚られるほど、エンタメとしてもシンプルに面白い。
オールタイムベストの大傑作! とまでは思えないものの、これまでのゾンビ(ブードゥー)映画を整理・再構築してエポックな発明として『ナイトオブザリビングデッド』が撮られていなければ、そこから連綿と続くゾンビ映画は確実に生まれてこなかったわけで、世界のエンタメ業界も確実に違うものになっていたことでしょう。この世にあまねく存在するどのゾンビ映画も『ナイトオブザリビングデッド』がなければ生まれてこなかったし、その影響下にない作品は一切ない。それほどまでの偉大な発明をしたジョージ・A・ロメロが逝ったんですよね。
死後の世界があるのかないのかわかりませんけど、もしあるとしたら、天国でも次回作の構想を笑いながら喋りながらも、ゆっくり休んでてほしいです、ほんと。


さて、今週末の重賞。ネオリアリズムの回避によって、どの馬も勝利のチャンスが増した。そのぶん着付競馬を目指す馬が減り、なかなかタイトな競馬になりそうな札幌記念。本命に推す馬はディサイファにした。
時計勝負が求められない舞台。ディープ産駒ながら多少重めで先行押し切りが持ち味のディサイファに条件がぴったり重なっているいまの札幌の馬場とメンツ。バウンド延長で楽に前で運んでくれさえすれば一発あるんじゃないですかね。休み明けで多少なりとも鮮度補給されたでしょうし……何よりオッズも現時点で単勝11番人気、どうやって算出するかはわからないものの、感覚的には期待値も高そうで。頼むからミラノとロードヴァンドールが引っ張る流れを視界のいい位置で見ててくれ。


……この世にあまねく存在するどのゾンビ映画も『ナイトオブザリビングデッド』がなければ生まれてこなかったし、その影響下にない作品は一切ない。と書きましたが、これまあ競馬に例えるとサンデーサイレンスみたいなもんなわけですよ。このブログを読んでくれている人に御大の偉大さが少しでも伝わるかなと…
そういえばディサイファも血を遡った先にはサンデーサイレンスがいますね。
ええ、まあ今回はこんな感じで。


※一番上に貼った画像は自分が編集制作を担当した書籍。もちろんロメロのことについても書かれてたりして。こんなこと言うの手前味噌でアレなんですけどいい本ですよ……是非