退路を断つこと(中山記念予想)

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締め切りにならないとやる気が起こらないという人がいる。


自分自身がまさしくそういうタイプの人間で 、ついぞ追い込まれた状態になって、後悔するといったことは海を泳ぐ鰯のごとく多数。
うるさく催促されて、もう逃げ場がない。そうなって、ようやく力が湧いてくるのだ。
自然に流れている時には力を出さない流水が、ダムでせき止められ、一度に放水されると電力を生み出すのに似ていなくもない。
とまあ、こんなレトリックまみれの文章から始めたのには訳がありまして。
このブログをいつも確認してくれる、好事家(変わった嗜好)の方にはバレているかと思うんですが、この文章を書いているのは中山記念終了後のことでして。というか、もう1日が経っている日のことでして。
仕事してたり、時間がとれなかったり、気が向かなかったり、まあそういうこともありますよね。
とはいえ、毎週毎週飽きずに更新しているので、穴を開けるのもなんだかなあ、と。
そんなわけで、今回の更新はレース終了後に書く予想ブログ。
たまにはそんな更新があってもいいじゃないですか、うん。
なかなか馬券には貢献できておりませんし、レース後の更新でもいいじゃないですか、というと、ちょっと自虐的すぎるか。
しかし、どうやって書いていこう。まあ、いつも通りのテンションで書いていくと思うんですけどね、ええ。
こんな言い訳はさておき、はじまりはじまり。



「背水の陣」という言葉がある。
「J1残留をかけた背水の陣」だとか、まあ苦境に立たされた、そんな瀬戸際の勝負所、みたいな使われ方が慣用化されてきているわけですが、元はといえば、昔の中国の戦において、戦力が圧倒的に劣っていた漢軍が考え出した作戦から来た言葉。
どんな話かというと……
20万の優秀な兵力を持つ敵方に対して、能力の劣るたった3万の兵力しか持たなかった漢軍の知将が、1万の兵を川を背にした形で陣取らせた。
(普通に考えればわかるとおり、動きの自由度が限りなく低い陣形をとったわけですな)
そのうえで、翌朝一度敵軍に攻撃を仕掛けるよう見せかけたうえで、太鼓や旗を捨て、自陣の川の方へ逃げた。
すると、もちろん敵軍は追撃のために川の方へ進軍。
漢軍の背中側には川しかない。言わば、溺れるか戦うかの選択肢しかない。能力の劣る兵士たちは死に物狂いで戦った。
その結果、相手の城を討ち取ることに成功した、と。
だいぶ割愛してはいますが、大筋こんな話。
つまり、一歩も引けないような絶体絶命の状況の中で、勝機を見出すために思慮を張り巡らせた作戦のことを指す、というわけ。
まあ、「本来の意味は〜〜」と講釈を垂れるような不粋なことは書きたくないし、そもそも講釈なんて垂れられませんし、この言葉の由来もググりながら、書いたわけですし。
じゃあなんで、背水の陣なんて言葉を持ち出したかというと、今回本命に推す馬に関連するからに他ならないんですよね、ええ。
でも、まだもう少しつらつらと。


そんな背水の陣。
この言葉、何かと目にする機会が多い気がしませんか。
試しにGoogleで“背水の陣”でニュース検索をしてみると、『フジ背水の陣…嵐・相葉雅紀「月9ドラマ」の仰天制作費』だとか、『東芝、いよいよ背水の陣』などなど、直近のニュースだけでも、多種多様な見出しで利用されまくり。
記者の人にとっても、使いやすくて読者の気をひくことができる便利な言葉なんでしょうね。
わかる。


そんな背水の陣。
これはギャンブル好きに愛される言葉でもある。
生活をかけた背水の陣の大勝負。
競馬ファンの多くはそんな勝負に出ている人を見ることも好きであることを経験から知っているし、また少なくない人は、財布の中身とSuicaの残高、あとは今月の給料日までの残り日数をはじきながら、ギリギリアウトの額まで張りこむ。その金を取っておけば数日は保つだろうに、普段張らない額をぶち込み「背水の陣…」とか考えたりしながら馬券を購入した経験がある人もいるだろう。
そんな極北がヒシミラクルおじさんといったところか。
背水の陣を成功させ続けた彼の姿に憧れる博打打ちは少なくない。だからこそ伝説になっているわけですしね。
わかる。


そんな背水の陣。
冒頭に書いた「締め切りにならないとやる気が起こらない」もそうかもしれない。背水の陣になってから、ようやく力を発揮するようになる、というかなんというか。
そうした視座で考えると、後悔を重ねながらも、反省することなく、締め切りの時を待つという仕事の進め方も、戦略的発想なのかもしれない。
わかる。いや、わかりたい。


そんな背水の陣。
「ここでの結果を見て繁殖にあげるかどうかを含めた今年のローテーションを決める。」
調教師にそう語られた俺の本命馬ヌーヴォレコルトにも、この言葉が当てはまるだろう。
ハープスター世代の牝馬として、オークスを制し、一線級の活躍を続けてきたヌーヴォレコルト
繁殖入りはまだ早い。
国内国外問わず、強い相手に果敢にメンチを切り続けてきたSC系のスケバンみたいな馬が背水の陣に臨む。前にいく馬が多く、ある程度流れてくれる分短縮差しのショックもいいし、前走でストレスも抜けているはず。ポテンシャルはこれまでに十分に示しているわけで。あとは状態面だけ。
ヌーヴォレコルトにとっても厩舎にとっても背水の陣。
自分にとっては購入する馬券で回収率100%超えをキープするという意味でのひとつの背水の陣。


……


というわけで、結果はご存知の通り惨敗。
背水の陣は成功せず、水中に沈んでしまったというわけですね。
来週はきっと弥生賞に関する雑文を更新。予想も文章ももう少し気張りたい。
現在は水中に沈んでおりますが、浮き上がって、岩肌にツメを立てて、よじ登って、再度勝負。うん。