貧困の中での競馬(アルゼンチン共和国杯)

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芥川龍之介の死因は服毒か服薬か、はっきりとはしていないものの、自殺によってこの世を去ったことは、広く知られている。

では、なぜ芥川は自殺に思い至ったのか、ご存知でしょうか。
苦悩に満ちた彼の作風から「いい作品を書くことができず、才能の限界に失望して自殺した」とイメージされることが多いものの、それは間違い、というか、文芸評論家のロマンチックな願望にすぎない。
芥川の本当の自殺の理由は「義兄の死」「貧困」である。義兄が借金をつくり、鉄道自殺をしてしまったことで、芥川はその借金を背負うことになり、結果、貧困の中で執筆活動が停滞、彼は死を選んだのだ。

 

芥川龍之介がそうであったように、貧困が人の思考能力を奪い取るということは、ままあるように思う。どこぞの弁護士事務所のCMも「あなたの頭の中、借金で一杯になってませんか?」と優しげに語りかけるキャッチコピーで、債務整理を提案してくるものがあるけど、その弁護士事務所に頼るということは、借金を取り立てる側が消費者金融から、(地上波の広告費を厭わないほどの収益を上げているような)よりエゲツない弁護士事務所に変わるだけ。にも関わらず、その事務所を頼る人は少なくない(だからこそ、広告を打てるほど儲けているわけで)。

少し想像すれば、街の法テラスだとかに頼ればいいものの、まさしく、金の手筈で頭がいっぱいになって視野が狭まってしまうんだろうな、そんなこととか。というか、俺もそんな時期ありましたし。貧困は思考能力を鈍らせる。

 

いやまあ、借金の有無に関わらず、お小遣いだとかバイト代だとか、限られた可処分所得の中で競馬をやっていると、“貧困によって思考が停滞する”それに似た局面によく出くわす。そんな話がしたい。
嫁から次の小遣いをもらえるまで後2週間。平日の昼食代やタバコ代、同僚との飲み会代を考えると1日平均1,500円、2週間にして20,000円は必要なものの、財布の中には5,000円しかない。そんな時に競馬なんてやろうもんなら、もう大変。
目標額が20,000円とハッキリしているからこそ、手元にある5,000円を目標金額に届くように賭けてしまうのだ。
例えば1-7、もしくは1-9の馬連が来そうだと予想したとする。持ち金を20,000円に増やすために絞りに絞った勝負レース。
1-7のオッズが5倍、1-9のオッズが10倍だったとしよう。いつも通りの買い方であればどちらもにレートに準じて均等に賭けるか、オッズで傾斜をつけた額を賭けたりするものの、今回は5,000円の元手を20,000円に増やす必要がある。そうした状況で、1-7の馬連を買おうと思うとマークシートは4,000円分、1-9の馬連であれば2,000円分塗りつぶす必要がある。つまりどちらも買うということは許されない状況。そこで、より堅いオッズ、つまりより可能性の高いと考えられる1-7の馬連を購入したところ、1-9の馬連で決着。
あちゃー、いつも通りの賭け方なら適中だったのにー。なんて、ちょっと極端な話だけども、似たような経験は馬券好きなら誰しもあるのではないだろうか。
これこそ、芥川龍之介と同じようなもの。貧困が招いた思考停止状態。こんな具合で馬券を買ってちゃ当たるものも当たりませんよね、ほんと。


そんなこんなで、今週末の重賞アルゼンチン共和国杯で本命に据えるのはトレジャーマップ。
「いやいや!自分!なんかえらい人気ないところから入って!さっき自分が書いてましたけど、目標額でも設けてはるんとちゃいます?!」
決してそういうわけではなく、オッズと自分の評価との乖離を最も感じる馬がこの馬なのだから仕方ない。
まずは何より斤量が魅力。今日の東京10Rで50kgのゲッカコウと54kgのラヴィエベールが半馬身差。馬の名前だけ見てたら、ラヴィエベールに対してゲッカコウが0.1秒差まで迫るなんて、なかなか考えられないけど斤量差が有利に働くというのはこういうこと。トレジャーマップは馬格のない馬なだけに、このハンデ設定は、他馬の軽斤量より有利に働く可能性が高いと見た。
また、過去の戦績を見るだに連チャン期が存在するのもこの馬の特徴。父・ステイゴールドという点も加えてSCタイプと見た。
これまでは、その父の血を発揮できていないのか、アップのタイミングで意外にも好走してないものの、今回は軽斤量・内枠という武器もある。まあ、とにかく、3着内を期待した馬券をしこたま買う。次の小遣い支給日までに20,000円を確保させてください!神様!

(たまにはこういう軽い感じで締め!)

強さ、憎らしさ、身の程知らずさ(JBCクラシック)

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秋天が終わったかと思うと、翌々日にはメルボルンカップ・北海道2歳優駿が開催され、その翌日には西日本ダービー。さらにその翌日にはJBCが開催。グレードレースが立て続けに開かれて、地方競馬ならびに海外競馬の馬券も購入される好事家の皆さんにとっては、大変お忙しい1週間かと思いますが、いかがお過ごしでしょうか。

遅筆なもんで、上に記した競走についてはブログで書けませんでしたが、豪華なメンバーの揃ったJBCクラシック。これについてくらいは書いておきたいなと思い、今回は珍しく週半ばの更新です。

 

JBCというと、地方競馬ならびに周辺産業の存続問題が立ち上がっていた時代に、地方競馬“全体”を盛り上げる必要性に駆られた開催主の「ダートレースにおける王者決定戦をはじめることで地方競馬に活気を与えよう」という思いから始まった、そんな経緯があるため、施行される競馬場が持ち回りで行われることが大きな特徴。
つまり、レースの条件が毎年異なるというわけで、過去の傾向から馬券を買う人にとってはなかなか予想が難しいレースなのではないでしょうか。と思いきや、これまでの配当はその真逆。過去10年間の馬連平均配当は1,000円にすら達しないという堅さ。
一体なぜ、開催条件が異なるにも関わらず、これほどまでに人気サイドでの決着に終わるのだろうか。それは、誰もが考える通り、展開の紛れが少なく、力の差がレースの結果に反映されやすいダート競走であることが理由の1つだろうし、それに加えて、地方交流重賞ということで、こう書くと悲しくなりますが、実質レースに参加できる中央競馬所属の馬は数頭、JBCクラシックの場合は8頭のみの参加で、設立時の理想とは裏腹に、中央所属の強い馬が憎らしいほど強く、馬券購入者に買目を大きく絞らせていることが更に大きな理由だろう。
強い馬の強さが際立つ、それが俺にとってはJBCクラシック

 

ところで、今年の重賞を振り返ってみると、7月31日に開催されたアイビスサマーダッシュも強い馬の強さが際立つ、そんなレースだったことが思い出された。新潟直千という圧倒的外枠有利のコースで、内枠を引いてしまった1番人気のベルカントだったが、抜群のスタートから外枠に進路を取り、絶好枠から完璧なレースをしたネロをも差し切るという、敵わなさを見せつけるかのような、穴党の願いを断ち切るような勝ちっぷりだったことは記憶に新しい。

 

そんな7月31日といえば、うんこ味のカレーか、カレー味のうんこか、どちらかの選択を迫られた東京都民が小池百合子を都知事に選んだ日でもある。
もちろん翌日の新聞1面には「小池百合子 当選」の文字がデカデカと飾られる。だけど、俺が書きたいのは政治についての話じゃない。その1面を捲った3面に記された記事。社会面に並んだ「元・横綱 千代の富士死去」についてだ。
Wikipediaからの引用で恐縮ではあるが、歴代3位・通算31回の幕内最高優勝を果たしたほか、歴代2位の通算勝利数(1045勝)と同3位の幕内勝利数(807勝)、1988年5月場所7日目から同年11月場所14日目までの53連勝(取り直し制度導入後歴代3位)など、数々の栄光を手にした史上有数・昭和最後の大横綱。1人の偉大な強い男の逝去。

 

そんな千代の富士が活躍を始めた当時、最強と呼ばれた力士の1人、北の湖はその強さのあまり、当時の相撲ファンから憎らしさすら抱かれていたと聞く。北の湖が敗けると、その日の『8時だョ!全員集合』でネタにされるほどで、さらに北の湖が敗れた優勝決定戦にいたっては、瞬間最高視聴率65%もの数字を叩き出したという。それほどまでの注目を集めた取組で北の湖を下した力士こそ、千代の富士だった。
千代の富士は、小兵ながらも良質な筋肉を持っていたこともあり、力に任せて無理な上手投げを繰り返し、若かりし頃から肩には脱臼癖がついてしまっていた。力づくの上手投げを主としたその戦法は、後に当時の関脇、玉ノ海から「身の程知らずの相撲取りだった」とすら評された。そんな千代の富士横綱にまで登りつめたのは、 脱臼のリスクを軽減するために、酒タバコを断ち、肉体改造を重ねたことはもちろんのこと、素早く前三つを取る戦法に切り替えたことが大きな理由だと述懐する。これらを振り返った九重は「脱臼こそが千代の富士という大横綱を作った」と後に語った。

 

いつものごとく余談が長くなったが、身の程知らずな相撲を経たことが大横綱をつくった、その見方こそが、今回のJBCクラシックで俺が本命視する馬にも関係する。

俺が本命の印を打つホッコータルマエもこれまで散々身の程知らずな競馬をしてきた。いつぞやのJBCクラシックでは、それまで多くのレースで勝ちを分け合ったコパノリッキーに執拗に絡みに行ったし、内枠の逃げ馬に何がなんでもハナを譲らせまいとする、無理な行きっぷりで勝ちを逃したレースもあった。その時の身の程知らずな経験がここで活きる。アウォーディーコパノリッキーをはじめ、千代の富士の例えでいうと、隆の里を思い起こさせるような、憎らしいほど強い馬に囲まれてのレースにはなるが、鮮度で走るとタイプの馬ではなく、鞍上もさすがにいつかのような無理な主張はしないだろう。コパノリッキーを潰そうと前々で豊が競馬をして、前に重心がかかる中、先行ちょい差し、大人の競馬でタルマエが馬券になる。
千代の富士も上手投げ一辺倒の頃から強く、ルックスも兼ね備え、人気を集めた力士だったが、大横綱になったのは経験があってこそ。ホッコータルマエもここで力を見せつけてさらにその地位を向上させることに期待。

大口投票とかの話(天皇賞・秋)

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夏から秋。

季節の境目として、秋分という時候こそ定められているものの、2016年に生きる誰もが、実感として「秋分になったら秋だ」と思えないように、季節の境界は明確なものではない。
同じように感じられるのが、夏競馬から秋競馬。
そりゃ、開催がローカルから中山に移り変わったら、秋競馬のはじまりなわけだけど、その瞬間に「よし秋競馬の始まりじゃ!」と実感が持てない。すぐさま秋競馬の始まりを実感できる人もいるだろうけど、自分はそうではないのだ。
そんな俺が毎年秋競馬の訪れを実感できるようになるのが、今週末に開催される天皇賞の頃から。菊花賞を終え、日本を代表する名馬が日本を代表する競馬場に集結するから、というそれだけの理由でもなく、肌寒さを感じる気温になったからという理由でも決してない。では、一体なんで、毎年この時期になると秋競馬の到来を痛切するようになるのか。考えてみると、その大きな理由に『大口投票』の存在があることに気づいた。

 

先週の菊花賞でもサトノダイヤモンド単勝ディーマジェスティ複勝に数百万円単位の投票があったという。夏競馬の頃には聞くことの少ない大口投票に関するニュース。年間数千レース単位で中央競馬主催のレースが開かれているわけで、そのどのレースにも大口投票をするチャンスは潜んでいる。

それにも関わらず、大きなレースになるにつれ、その報を聞くことが多くなるのは、レースそれ自体の注目度もさることながら、人が大口投票をする動機には、ある種の祭りへの参加意識があるからじゃないだろうか。そんなお祭り感のあるレースの到来に気づかせてくれる『大口投票』こそが夏競馬から秋競馬への移り変わりを俺に実感させてくれるんだ、きっと。

 

大口投票といえばテリー・ラムズデンの話をしないわけにはいかん。自分はこの男について『競馬漂流記』で知ったのだけど、競馬史上最大のギャンブラーと呼ばれたその男の桁外れな競馬への向き合い方は、活字の一つひとつからも滲み出てきていた。

16歳で地元を離れ、投資会社を起業、バブルの時期に日本の株を扱うことで一儲け。本によると、1979年から85年までの6年間で5,000億円ものお金を動かして、多大な利益を生み出していたという。週90時間休みなく株に向き合っていた彼は、息抜きのひとつとして競馬を始めるのだが、競馬は彼の博打打ちとしての本能に別の火をつけた。

株と同じように競馬にものめり込み、異常な額の馬券を購入。金額にして、1,000万円を賭けることはザラで、多い時には2億5,000万円もの大金を馬券に変えていたそうだ。
しかし、そんな生活は長く続かない。1987年のブラックマンデー、株の大暴落とともにラムズデンは100億円もの負債を背負うことになったという。ちなみに、馬券以外に、馬の購入にもラムズデンは躍起で、一時は名牝ケイティスをも所有していた。それも悪夢の月曜日によって、売却しなければならなくなり、日本に流れてきたのだけど。そして、そのケイティスがあのヒシアマゾンを産み出した母馬だったのだ……というのはちょっと別の話か。

 

うん、話が逸れてしまった。そんな破天荒な博打の打ち方には到底及ばないものの、週末の天皇賞でも誰かが既にある馬に大口投票を行なった。その馬こそ、今回の俺の本命馬ステファノス
前走の毎日王冠は外伸び馬場の中、内枠に突っ込み、直線で詰まりながらも1着のルージュバックに0.8秒差。そのルージュバックは、前走がダウン・小頭数・外枠とL系の走る条件が揃っていただけに、この0.8秒差は着差以上に価値がある。バウンド延長で楽に前目につけられるだろうローテーションも良いし、ポテンシャルは去年の秋天で証明済み。前走凡走して、ストレス抜いた叩き2戦目(2・2・0・1)の7番人気なら買わざるを得ない、鞍上の騎乗が不安視されているようですが、川田いい騎手だと思ってる自分としては、もう任せるのみ、うん。
もちろん俺は大口で投票するわけでもなく(出来るわけもなく)、小遣いの範囲内でまた豆券を購入するわけだけれども。ステファノスを軸にした馬連で秋競馬に挑む。

競馬阿房列車⑦ [まとめ]

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旅打ちを終えて3日。そろそろ東京でのこれまで通りの生活にも慣れてきたところで、今回の競馬阿房列車を振り返っておこうかな、と最後の更新です。

 

地元に戻っての入院生活。退院を果たして、東京に戻るまで、広島〜園田競馬場阪神競馬場京都競馬場笠松競馬場大井競馬場〜東京と、6日間で5つの競馬場を訪れる道程を内田百間の名著『阿房列車』になぞらえて、『競馬阿房列車』と表し、主に鈍行列車を利用して旅打ちをしてきたわけですが、兎にも角にも、この旅打ちを敢行して良かったなー、というのが1番の感想。
出発前は、この旅打ちで競馬に熱狂して一息、帰京後の生活を改めて頑張りましょう!と考えていたものの、いざ日本各地さまざまな競馬場を訪れてみると、競馬という文化の豊かさに改めて気付かされてしまい、これまで以上に競馬に夢中になってしまうといういい意味での本末転倒っぷり。


最後の更新となる今回は、トータルでの収支報告とともに、この楽しい旅打ちの中でも、特に印象に残った出来事について書いていこうかな、と思います。

それでは、まず!
トータルの収支
馬券代:+27,950円
交通費:-20,060円
飲食費:-29,220円
宿泊費:-17,500円
その他:-20,170円
残金:41,100円
どん。100,000円という初期予算の多さもあるかもしれませんが、5泊6日。飲食にはあまり糸目をつけてないですし、道中に充電器だとか、ヒートテックだとか、無駄なものを買っていながらして、60,000円弱の出費なんだから、悪くない収支なんではないでしょうか。まあ、道中友人宅にもお世話になったり、3,000〜5,000円の安宿に泊まったおかげもあるし、馬券代でプラスに持っていけたのもデカかった。とはいえ、これから旅打ちを計画される方は1日10,000円の予算くらいでなんとかなるような気もします、というかなる、うん。

 

そして、特に印象に残った出来事については、無意味にキャッチーにランキング形式にしてみようかな……ということで、
競馬阿房列車 俺的なんでもベスト3!
1位 笠松競馬場というこの世の極楽

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旅打ち5日目。笠松競馬場は厩舎から競馬場が離れているため、公道を馬が歩いて競馬場へと向かう。漫画『パッパカパー』でその事実は知っていたものの、この目でその光景を見ると、それはそれは牧歌的で極楽としかいえない感情になった。例えるならば、東京の居酒屋『たぬきや』に初めて訪れた瞬間というところでしょうか(例えてより分かりづらくなるという好例)。なんというか、公道を歩く馬を眺めていると「頑張るんだよ」という感情が溢れ出す。走り続けなければ生きていけないのは、俺も同じなんだよな。

 

2位 コーチ屋からの甘い一言 in 園田競馬場

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2日目に訪れた園田競馬場では、まさかまさかコーチ屋に声をかけられるという事態に遭遇。そろそろと隣に立たれ、勝ちっぷりを自慢されたあげく、次のレースの買い目を教えてやると甘い声をかけられる。もう、典型的なコーチ屋ですよ。万が一、万が一にも親切心だったとしてもそんな声のかけ方は疑ってしまうよ、親切心だったならごめんなおっちゃん。とはいえ、こんな事態に遭遇できるなんて夢にも思わなかった。文章でしか読んだことのない出来事が目の前で繰り広げられると、それは楽しい。なんてったっていまや2016年ですよ。府中では絶対に味わえなくなっているだろう出来事。旅打ちの醍醐味ですね、間違いなく。

 

3位 菊花賞という名の答え合わせ

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4日目には京都競馬場に。菊花賞は想像に容易く、大勢の人が淀に集まり、熱狂的な祝祭空間になっていた。これはTwitterでフォローしているある方が書かれていたことなんですが、“菊花賞はテストみたいなもの。1年間の自分の勉強の成果が出る気がする。(中略)色々試行錯誤があっただけに、今日の菊花賞は本当に嬉しい。”というツイート、これに両手を上げて賛同。豊の美しい騎乗っぷりに助けられたこともあるけど、エアスピネルの距離適性を疑わずに三連複の軸に固定したのは、自分の今年のクラシックにおける勉強の成果が確実に出ていたと思う。あの祝祭空間での的中は何物にも代え難い歓びを感じられた、うん。

 

この他にも、園田競馬場でのサンバだとか、尼崎の飲み屋『大英』での博打好きおばさんとの交流(どんなギャンブルも顔で買い目を選ぶと豪語)だとか、阪神競馬場で隣に座った兄ちゃんの陽気な打ち方だとか、名古屋の極楽居酒屋『大甚』だとか、改めて気付かされた大井競馬場のモダンさとか、細かく書けばきりがないので、以下これまでの更新を読んでいただければ……


思えば、最初は

人は志を高くし、良書を読むように、良い旅行を志し選択しなくてはならぬ。詰まらぬ本を読んで、人生の時間を無駄にしないことが重要なように、良い旅行を計画して自己に役立てることが大切である。つまらない旅をして時間やお金を空費してはならぬ。第二は、旅行行為は、たんに自分自身のためだけでなく、旅行によって読みえた知見をもって隣人の幸福に役立てることが要訣だ。

なんて構えて書いていましたが、振り返ってみれば、もうこれは疑いようもなく、俺だけが楽しんだ旅打ち。間違いない。当初の目的のひとつだった、読んだ人の役に立つかどうかとちう面はさておき、旅打ちの楽しさみたいな部分は伝わったのではないかな……伝わっていると嬉しい。
これを読んで、旅打ちに出る人が1人でも増えれば良いと思うし、それは競馬という文化の豊かさに気づく人が、より増えるという気がするんで……んー、なんというか、そんな大上段に構える必要もなく、旅打ちって最高ですよ。次はあなたの旅打ち記が読みたい!書を捨てよ!競馬場へ出よう!

競馬阿房列車⑥ [6日目 名古屋〜大井競馬場〜自宅]

予定では4泊5日の旅程だったものの、広島〜東京間で4つの競馬場を巡るとなると、その日取りは少々タイト過ぎたようで、泊数を1日延長。
ええんじゃええんじゃ、昨日も一昨日も馬券で儲けさせていただいとるけぇの。ってな具合で旅打ち、競馬阿房列車6日目に突入です!


9:10 KAKO柳橋店(愛知県)

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本日はビジネスホテルの朝食をパス……って、別に2日酔いで朝飯が要らないってわけではないんですよ?
あれだけ魅力あふれる空間を無視するということは、食事に関心の薄い自分としても後ろ髪引かれる思いがあるさ、そりゃ。けれども、そうさせるだけの理由が名古屋という街にはある。その理由とは何か……?
写真もありますし、すでにお気付きの方ばかりかと思いますが、モーニングのためですよ。地に行ったら、地のルールに従い、地のものを食べる。旅行の鉄則だと思う。名古屋に行ったら朝はモーニングでしょう。
ブレンドコーヒーを注文すると、バターがたっぷり塗られたトーストが付いてきて400円というコスパと魅力的。しかも、コーヒーはおかわり自由ってんだから最高ですよ。スポーツ紙読みながら、1杯おかわりをいただいた。
その間常連さんの来店が引っ切り無し。こう、筆力のない自分としては、その魅力をなかなか言葉にできないものの、いい店だったもんな。愛される理由がわかる店の空気感。なんてったって40年ほど続いてる店だそうで。魅力あふれる店じゃないと築きえない歴史ですよね、間違いない。

 

12:03 名古屋駅(愛知県)

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その後、Twitterで教えてもらったピザ屋で昼飯を済ませて名古屋駅に移動。名古屋に来てピザを食うとは思わなかったものの、美味かったです。たしかsolo pizzaというお店なので、名古屋に行かれる方は是非。
ってあれ……?俺は今まで鈍行列車に乗ろう乗ろうとしていたけど、いつの間にか手元には新幹線のチケットがあった。そりゃまあ、自分が買ったんですけどね。
本当は最初から最後まで、鈍行列車でこの旅を終わらせようと思っていたけど、よくよく考えたらそんな必要は全くない。
かの文豪、内田百間の名著『阿房列車』シリーズから、自分の一連の旅程についての更新を『競馬阿房列車』と表したのだから、基本的な旅への向き合い方は内田先生に従うべき。その先生が「列車に乗るなら一等車が良くて三等や二等には乗りたくない、三等車の乗客の顔つきは嫌いだ。(めちゃくちゃ中略)二等に乗って行き帰りを往復するのなら、行きは一等でも帰りは三等でいいな。」と書かれているのだから、現代における一等車である新幹線に乗ることも自然なことだろう。これまで半分くらいの道程を、現代の三等車である鈍行列車で移動してきたのだから、ここからは新幹線でいいはず。
「いや、それは違う」と言われても仕方ない。先生がそのように書いていて、自分もそれに倣っているのだから。ちょっと内田百間ぽく書いてみたところで次の道程に移りましょうか。

 

13:36 品川駅(東京都)

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「うわー、新幹線、早いー!」そんな小学生以下、3歳児程度の感想を抱くのも仕方ない。広島から名古屋間の距離は528km。その行程を鈍行列車で移動すると、ゆうに5時間半以上かかった。それに比べ、名古屋から東京までの距離は366kmほどだそうで、その距離を新幹線に乗ってかかる時間は、なんと1時間半。距離は1.5倍になってるのに、かかった時間は1/3以下です。すげーよ文明。
そんなこんなで東京に戻って来たぞ俺は!旅打ち楽しかったー!ここまで読んでいただいてありがとうございました!感謝感謝です!

 

 

 

 

 

 

 

 

14:17 大井競馬場(東京都)

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って、それだけじゃ終わらなかった。
この旅程で5つ目の競馬場に訪れた。その5つ目の競馬場こそが、俺にとって、東京に戻って来た、ということを強く痛感させてくれる大井競馬場だ。

ここまで、園田で負け、阪神で勝ち、京都で勝ち、笠松で勝ってきた。慣れ親しんだ大井競馬場で有終の美を飾らせていたきましょう!そんなスケベな気持ちも多少あったかもしれない。
それにしても、これまで何度も大井競馬場には足を運んでにも関わらず、この短期間で中央・地方、さまざまな競馬場に訪れた自分の目+には、大井競馬場が新鮮な表情を見せてくる。
なんといっても、大井競馬場の特徴はモダンなセンスが光るところ。指定席の座席のデザインもそうだし、スタンド正面の光による演出も超おしゃれ。それでいて地方随一の強さを誇る馬が集まる締まったレースが行われる。
これまであまり気づいてこなかったものの、大井競馬場、めちゃくちゃ魅力的な競馬場ですね、これ。
1R目から、おそらく仕事を抜け出してきたであろうスーツ姿の男性の姿が目立つことにも合点がつく。だってこんなに懐の広いいい競馬場なんだから。
馬券は、いつも通りガツっとやられたものの、その結果はそんなに悔しくなかった、

身の回りに、当たり前のように存在し、当たり前のように訪れていた競馬場すら、新たな表情を見せてくれ、その競馬場が秘めている魅力を再確認・新発見させてくれる。そんな具合で、ホームグラウンドとは違う競馬場を短期間に見まくることで、身近な競馬場の魅力が顕在化するのが旅打ちのいいところなのかもしれない。そんなことを思った競馬阿房列車第一弾。あまり綺麗に締められませんでしたが、そんなことを素直に考えましたね、うん。

 

大井競馬場を最終レース後に発ち、無事自宅に戻ってまいりました。

また、数日後には、この道程を振り返ったような更新をしようと思いますので、その際は是非。あなたに読んでほしいんですから。よろしくお願いします!

 

ここまでの収支
馬券代:-8,080円(-12,500円 / +4,420円)
交通費:-11,590円
飲食費:-3,560円
その他:-4,000円
残金:41,000円

 

これまでの投稿はこちらよりどうぞ

bxkxn.hatenablog.com