かつての俺よ、考えを改めろ!「かに道楽」は味も雰囲気も抜群のエンターテイメント空間である

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 衒いもなく主語が大きな話から書き始める。人類は以下の4つに分類できる。

1.「かに道楽」へ行ったことがある人間
2.「かに道楽」へ行ったことがない人間
3.「かに道楽」へ行った記憶はないが実は行ったことのある人間
4.「かに道楽」へ行った覚えがあるが実は行ったことのない人間

 以上である。
 私はつい昨日まで2もしくは4、いや4寄りの2、つまり2だった。が、ついに1になってきた。
 今回はそんな話を書きたい。
 発端は20,000円分の商品券をもらったことだ。使い道は「なかなか手の出せない飯屋に行く」にあっさり決まった。そして、商品券が使える飲食店を探したところ目に留まったのが「かに道楽」だったという運びである。
 というわけで、早速最寄りの「かに道楽 西新宿五丁目店」へと向かった。すると、一体どうして。満席なのだ。コロナ禍にあって満席。そんなに1の人間は多いのかと驚いた。と同時に焦った。かにに向けて気持ちと胃を整えていた(つまりそんなことができるほど金銭[金券]的余裕がある日)に、かにを食べられない可能性が出てきたのだ。ここで1の人間であれば、「ほな近場の別の店でも行きましょか〜」となるかもしれないが、かにとは縁遠い暮らしを送っている私としては由々しき事態である。かには一大イベントなのだ。今日という日はかにに決まっているのである。そのために一日を過ごしてきたのである。急いで近くの「かに道楽」へ電話。席を確保してもらったうえで、タクシーに乗り込んだ。


 「かに道楽 新宿駅前店」は、新宿武蔵野館と同じビルの中にある。2の私にとっては、これまで映画を観るためだけに存在していたビルで初めて3階以外の行先ボタンを押す。

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 エレベーターを出ると、早速ディズニーランドばりのテーマパーク感である。いや、もしかすると、いたって普通の割烹料理屋の佇まいなのかもしれない。しかし、赤提灯に染まり切り、そんな店に行きなれていない私にとっては、紛れもないテーマパークなのだ。


 和装で決め込んだ爽やかな男性へ席まで通される。瓶ビールを注文し、似たようなコース料理が並ぶメニュー(なにせ「かに料理」がウリの店だから、メニュー写真はどれを見ても赤色、もしくは白色なのだ)を手に取り、悩むこと数分。

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「かにすき」が食べられることを理由に「佐呂間」に決めた。

 

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かにが運ばれてくる。殻から身を剥がす。簡単。食べる。味。濃い。美味い。蟹味噌。舐める。飛ぶ。日本酒を頼んでいなかったことを後悔して、慌てて注文。「かに道楽」オリジナルの日本酒だという「道楽」を啜る。かにの濃厚さを邪魔しない口当たり。軽い。美味い。

 

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 かに、かに、日本酒、かに、日本酒。チェイサーがわりにハイボール
 およそ30年の間、2として生き続けてきた私は愛憎がこもってなのか、こんな考えがあった。「かに道楽」なんて、所詮観光地で老舗の高級店面して営業続けられてるだけの店でしょ……1になった私が、かつて2だった私に伝えたい。「かに道楽」は美味いぞ。穿ったイメージを改めろ。

 

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 かに料理に慣れ親しんでないことがよくわかる。こんなクソ暑いなか鍋料理を頼んでしまった。後悔も束の間、この二の句としてはおかしいが、いやはやこれも美味いのだ。判別不能な濃い味つけの出汁で好みの具合にかにを茹でる。殻から身をほじりだす。三つ葉と共に口に運ぶと、もう絶品。酒が進む。掘りごたつから足を出して胡座をかく。美味い飯と酒は心身をほどくことを痛感する。

 

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 そして宴もたけなわとなった頃、突如始まったのが琴の演奏だ。
 これも割烹料理屋ではよくあることなのか? きっとそんなことはないだろう。いや、わからない。しかし、「かに道楽」が私にとって最高のエンターテイメント空間であったことは事実だ。重ね重ね書いているように、もちろん味も美味い。一般労働者以下の私にとって確かに価格はネックだ。しかし、また来たいと思ったことは確かである。馬券を当てる必要がある。