博打電脳放浪記:ストリートビューを使って競馬場に行った気になる(浦和競馬場)

 緊急事態宣言が解除されて数週間が過ぎた。第二波が来るだの東京アラートだのなんだのと騒がれながらも、街は徐々に活気を取り戻しつつある。東京では居酒屋も24時までの開店が認められ、NPBの開幕もあともう少し。地方の場外馬券売り場では営業を再開しているところもある。

 しかし、競馬場はいまだに入場再開の見通しが示されていない(このこと自体の是非はさておき……むしろ是だと思っとりますが)。毎週のように競馬場に足を運ぶほど熱心だったわけでもないが、これほど足が遠のいたのはしばらくぶりである。もう我慢ならん。そんな具合である。

 

 というわけで、タイトルの通りだ。文明の利器「Google Map」のストリートビュー機能を使って、私が最も足繁く通っていた浦和競馬場に足を運んでみようと思う。欲求不満の解消だ。

 南浦和駅に降り立った。浦和駅から行く人もおられようが、そこは人それぞれである。私はいつも南浦和駅から浦和競馬場へと向かう。特にこだわりがあるわけではない。ただ、習慣である。

 

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 駅から地上に降りるエスカレーターから見える「山田うどん」をここでは抑えておきたい。えのきどいちろう氏がいうところの”和の食材だけを使ったダイナー“である。ロードサイドに点在し、こと埼玉県民から絶大な支持を集める「山田うどん」である。気になり続けているものの一度も入ったことがない。競馬場へ向かう気持ちが前のめりになるあまり、いつも横目で眺めては通り過ぎるだけだ。

 

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 と、書いておきながらなんだが、このたこ焼き屋は贔屓にしている。特別美味いわけではない。けれど、そこそこ美味い。某チェーン店の揚げたたこ焼きと違って、ふわとろを目指した味わいが都心近郊では珍しく、これがなんともアリなのだ。
 またたこ焼きってのは、歩きながら食べられる点もいい。行儀は悪いが、競馬場へと急いで向かうティピカルな落伍者にとって、大いに都合がいい。たこ焼き8個入りを買うと、浦和競馬場に到着するタイミングでぴったり完食できることを、ここに付記しておく。さて、まだロータリーから出ていない。先を急ぐ。

 

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 右奥に小さく見えるのが競馬場行きの無料バスだ。開催日であれば時間をわ問わず、無彩色の人の群れができている。
 しかし、私はこのバスに乗ったことがほとんどない。酒を飲みながら競馬場へと向かう散歩道に一つの愉しみを覚えていることが大きな理由なのだと思う。もしくは、競馬場へ向かう無料バス特有のすえた臭いが苦手だからなのかもしれない。
 理由はこの際なんだっていい。いつもの通り歩いて(マウスをクリックして)浦和競馬場へと向かう。

 

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 バス停の斜向かいにはローソンがある。ここで毎度酒を仕込む。宝缶酎ハイの500ml缶が常備されていて、私にとって大変都合がいいコンビニだ。
 ちなみにこのローソンは薬局が併設されたスタイルなので、事前に胃薬を仕込んでおくこともできる。覚えておかれたい。

 

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 そのまま直進すると左手に「みらべる」というスーパーが見えてくる。どこの地域にも必ず一軒はある、近隣住民の胃袋を支えるタイプのスーパーだ。 
入店したこともないが、特売の日には人集りができている。佇まいからその影が確認できる。

 

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 道を右折し、真っ直ぐ進むと右手に大きめの公園。浦和っぽい。

 

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 そのまま真っ直ぐ進むとセブンイレブンがある。駐車場が大きい。浦和っぽい。

 

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 突き当たりまでくると、浦和競馬場はもうすぐ。左折してとぼとぼ歩く。普段あまり気にしてなかったものの、建売(っぽい)住宅がずらっと並んでいる。都心にもほど近く、近所に大きな小学校がある、このエリアらしい光景といえるかもしれない。そのすぐそばに競馬場があるってのは、なんとも奇妙な感覚を覚えるものの……歩道が狭いので複数人で歩く際は縦列になろう。割とよくクラクションを鳴らされる。

 

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 浦和競馬場すぐそばの酒屋。ここが競馬場入場前の最後のアルコール調達スポットだ。ちょっと洒落た雰囲気の店構えで、売っている酒も気の利いたチョイス。ドラフトビールなんかもあったんじゃないかと思う。迷わずアサヒの缶ビールを手に取ってしまうので、この情報は定かではない。

 

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 酒屋から1分も歩けば、20歳を超えてからというもの、親の顔よりも見ている浦和競馬場の看板がすぐそこに。入場口前で新聞を買い、サービスの入場チケットを受け取って競馬場内に入る。あとは怪気炎を上げる場立ちの予想屋の話に耳を傾けながら、馬券を楽しむのみである。

 

 


 いざ書き始める前は「なんか逆に虚しくなりそうだな」と予感していたものの、これが意外と悪くない。競馬場に向かっているときのそわそわした気持ちが追体験できる、というと言いすぎかもしれないが、それに近い実感はあった。

 

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ストリートビューの機能で在りし日の場内を眺めることもできる。

 

 ストリートビューでいつもの博打道を歩いてみることは、いま現在競馬場に足を運べていない競馬(場)ファンにとってのよすがになるかもしれない。やってみたら意外と楽しいかもしれませんよ……? そんなエントリでした。

 これを面白がれるのは自分にとってのノスタルジーを追っているからという可能性も捨てきれなくはない、むしろ大いにあるのだが、まあそれはそれでいいとしてくださいよ。
「こんなときだからこそ」を枕詞に求められる奇妙な連帯がアリなら、「こんなときだからこそ」これくらいの雑な面白がりもアリでしょう。と、なんだか無理やり正当化しようとはじめたあたりで、おしまいおしまい。