WINS新宿前の早替婆さんを知っているか

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 新宿駅東南口を出てWINS新宿に向かう道中、青梅街道の高架下を潜った道角には、いつもせっせと働く「早替婆さん」がいた。細身で神経質そうな雰囲気。細いフチの眼鏡をかけてラジオの競馬中継を流す姿はWINS新宿と一体化しているかのような存在だった。
 的中馬券を手渡すと、手元のノートを手繰りながら、該当するレースを見つけ出し、こちらに配当を伝えると共に何かしらの褒めの一言を投げかけてくれる。

「こりゃよくとったね!23,000円ね!はい!」
 手数料分を引かれた配当を受け取ると、早替屋の周りを囲むオッチャンたちから悔し紛れの賞賛を受けることもよくあった。馬券のうまさを褒められながら「タバコ一本頂戴よ!」なんてせっつかれるあの雰囲気がたまらなく愛おしかった。


 JRAや南関各場、それぞれで払い戻しが行われていないタイミングでも、的中馬券を渡せば、その場で払い戻しをしてくれる早替屋。配当の一部、概ね5%くらいを手数料として差し引くことを生業とする彼女は、宵越しの金を持たない人間にとってありがたい存在だった。最寄りのオフトまでの交通費すら手元にない貧乏学生時代は何度も助けられた記憶がある。

 

 そんなWINS新宿前の「早替婆さん」が姿を消したのはつい最近のことだった。

 

 インターネット投票が広まっていき、紙の馬券を購入する人が減ったことが原因なのか、
体調でも崩したのか、はたまた宝くじでも当てたのか……
 姿を消した原因はわからないものの、2020年を迎えてパッタリと消えてしまったのだ。全身無彩色で身を固めたTHE場外馬券馬爺さんも、いつもそこにいるはずの婆さんがいない様子を不審に思ってか、近くにいる警備員に「早替婆さん」の不在について尋ねていた。同様の場面を年が明けてからというもの、何度も目にした。

 

 みんな不安に思っています。あなたに生活を助けられた博徒は少なくないはずです。どうかご無事で。
 自分も本来ならば4,500円分の払い戻しのはずが24,500円分払い戻してもらったことがありまして(その時のエピソードは競馬に負けて財布をふくらませた件(あとで返すよ) - 放談リハビリテーションで紹介しています)、その節は大変助かりました。あの時の借りを返すためにも、もう一度その姿を見られる日を楽しみにしています。その時は的中馬券を正直に申告して、カスリを受け取っていただきますんで。あの時のことは噯にも出さないと思いますが、すんません。でも、あなたの姿を見ずに向かうWINS新宿は、いつものWINS新宿と違って見えるんですよ。なんでか。