追いかける(NHKマイルC予想)
ギャンブルの戦略の一つにマーチンゲールと呼ばれるものがある。敗けるごとに賭け金を増やしながら、勝つまでギャンブルを続けるという考え方で、ルーレットの赤or黒を選ぶギャンブルのような、確率がイーブンの際に特に有効といわれ、博打好きの間ではかなり有名な戦略の一つだ。
たしかに、約1/2で当たるギャンブルであれば賭け金を的中時の払い戻しに応じて増やし、利益を上げることはそう難しくないように思える。
しかし、そうは問屋が卸さない。ギャンブルは厳しい。
多くのギャンブルでは常に胴元の取り分が決められている。そのため、厳密な意味でのイーブンベッドはありえない。さらにルーレットで赤が50連続で出る確率だってゼロとは言えない。マーチンゲールは常に資金ショートのリスク(しかもそうなる可能性が高い)を背負った戦略だと言える。
とはいえ、そこまで理解していても、博打打ちであれば、マーチンゲールが有効な戦略だと感じるような経験をしたことはあるだろう。そもそもそうでなければ、マーチンゲールという手段がここまで有名になっていないはずだ。
しかし、先にも書いたように、マーチンゲールは大きなリスクを孕む手段で必勝法というわけではなく、戦略性も低い。
にも関わらず、なぜ博打打ちはマーチンゲールを有効な戦略だと誤解し、ここまで広まり続けてきたのだろうか。
それはなんといっても、追いかけて、追いかけて、追いかけて、それで敗けを捲ったときの痺れるような感覚は代え難い気持ち良さ。それゆえに残る強い印象が大きな理由なのではないかと類推する。
ギャンブルだけに限らず、恋愛も、アイドルも、他のスポーツも、大きな買い物も…… なんだって。追いかけて、追いかけて、追いかけて、勝ち取った、手にした何かはいつだってその物が持つ魅力以上に価値を感じてしまうものだ。人の性みたいなもんである。
「男のロマンは、追いかけることだ。」
というキャッチコピーとともに売り出されたTOYOTAの車は、そんな性を巧みに刺激し、大きな売上を記録した。
ライバルメーカーの名車スカイラインを追いかけるように開発された、その車の名はチェイサー。NHKマイルCでは、そんな名車と同じ名を持つダノンチェイサーから馬券を購入することに決めた。重心の低い走法で、なだらかに成長を続けるディープ×ロックオブジブラルタルの配合。本命の印を落としながら、仮にここで敗戦したとしても、引き続き追いかける価値の馬だという思いもある。ここで敗戦したとしても、追いかけて、追いかけて、追いかけたい。
マーチンゲールである。競馬資金がショートしないよう気をつけて競馬に勤しむ所存である。
(以下あとで消すつもりだったけど残すことにした締めの文章。蛇足。ボツ案。)
あまりにも予想がロマンに振れているかもしれないが、遠藤ミチロウが逝去したというのだから、今週くらいは“吐き気がするほどロマンチック”に馬券を買ってみようと思う。