名前は知っているけど食べたことない料理:シシカバブ

 

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好きなものがはっきりしているせいか、映画や音楽や文学その他もろもろ……新しい何かに挑戦するよりも、“これにしておけば間違いない”というものをついつい選びがち。しかし、そうしていてばかりではまだ知り得ぬ更なる「好き」に出会えない。まずは食事という面から保守的な自分に抗っていこうと思い立ち、「名前は知っている。なんとなく見た目もわかる。だけど食べたことはない。」そんな料理を積極的に食べてみようという試みをはじめてみました。(いつまで続くのかはわかりませんが)第一弾の「ビリヤニ」に続き、第二弾として食べてみたのが「シシカバブ」です。

<過去記事>


以前勤めていた会社のデザイナーへ年始の挨拶メールを送ったところ、「最近、中国東北地方料理のラム串にはまってるので今度行こう」という返信があった。おいおい、なんだその楽しそうな誘いは、というわけで間髪入れず返信。あれよあれよと会う日も決まり、当日は上野駅で待ち合わせ、御徒町方面に向かって揚々と歩く。しかし、お目当ての店はなんと満席!

「ほう、ラム串。私の知らないところでずいぶん人気になってるようですな。だけどまあ満席なら仕方ない。いつものように立ち飲み屋をハシゴする流れかな。それもまたよし。喉の渇きをビールで潤したい。」などと思いつつ店を出たところ、デザイナーは顔を上気させながら「大丈夫!もう一軒候補があるから!」と勢いよく言う。言葉の裏には「どうしてもラム串が食べたい!」という熱を感じた。よし。行こう行こう。そうして二軒目、入った店で食べた料理こそラム串ことシシカバブだ。

 

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チャイナタウンにありそうな入り口をすり抜けて着席するなり、百戦錬磨のデザイナー指揮のもと、メニューに書かれた数字を読み上げ、注文を通す。そして腰を落ち着け、お通しで出された甘辛いピーナッツをつまみながらビールを待つのだが……そのまま10分……来ない! 遅い! しかし、中華料理屋とインド料理屋は接客が適当であれば適当であるほど美味くて安い店だと相場が決まっているのだ。致し方あるまい。むしろこれは料理がうまいことを期待しておけという店側の配慮だな……と、都合よく気を沈め、さらに待つこと5分。ようやくビールが到着。やっとの気持ちで泡に口をつける。すると間も無くシシカバブが乱雑に机に並べられた。香辛料のいい香りが漂ってくる。

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鉄串を手に取り、恐る恐る口に運ぶと……獣臭さとスパイスの香りが両者譲り合うことなくぶつかり合った肉々しさ。そして独特の脂が口いっぱいに広がる。ウマイ! これはウマイ! 漢字でもひらがなでもなく「ウマイ」が適当な味わいだ。勢いよく食べ続けていると、辣油らしき油が皿底に溜まっていることに気づく。スパイスと掛け算された刺々しい絡みが堪らず、酒を煽る。2杯目からは紹興酒。仕事の愚痴を語らいながら、鉄串を掴み、肉を喰らい、紹興酒で流し込む。引き算という概念がないルーティンを繰り返す、こんな雑な食事はいつだって楽しい。

と、ここまで話を進めておいて、いまさら書き忘れたことに気づいたのだが、周りに日本人は1人もいない。アジア系の方ばかりで席が埋め尽くされていた。人種差別の意図は全くないが、なんとも粗雑さが許容される平成に似つかわしくない空間、そして味わいである。楽しい。ただし翌朝は羊の匂いが胃から上がってきて大変難儀したことも付記しておく。


最近はいろんな方法でインスタントに情報が手に入るので、どんな味なのか大方の想像はつくけれど、実際に食べてみないことには何とも言えないし、実食しているかしていないかで天と地ほどの差があると思いますし、新体験を大切にしていきたいと思う2019年ですので、定期的に「名前は知っているけど食べたことない料理」を食べてみようと思う次第であります。

 

シシカバブは、ぶつ切りにした肉の串焼き料理の一つ。中東を中心にアジア全域で食べられている。シシ(şiş)はトルコ語で串の意、カバブはもともとロースト肉(כבבא)を意味する古代アラム語である。

(以上Wikipediaより引用)

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故郷味

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11:00〜24:00

無休