血統と金力(天皇賞 春)

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「血統と金力。そういうもので政治をやると思っているわけでしょうが、それは甚だ間違っている」(要旨)
こうして近代政治を批判したのは稀代の知識人、丸谷才一だった。
他にも
「かつては、寝ないことがフェミニズムであった。そして今は、寝ることがフェミニズムなのである」
「何かに逢着したとき、大事なのは、まず頭を動かすこと。ある程度の時間をかけて自分一人でじーっと考える」
などなど、多岐にわたって地に足のついた知的な文が人気を呼んで、現在も体裁を変えつつ若い世代を中心に丸谷作品が売れ続けている。
SNSの存在が当然で、140字以上の文章を読まない、インスタジェニックな商品・体験を求める。そんなどこか蔑まれた目線で語られることの多いZ世代に彼の本が売れるということに丸谷の文筆、つまり文章が持つ本来の力が時代に求められていることが透けてわかる……
と、自分が編集したわけでもない書籍の宣伝をはじめかけたところで、まずは持論をひとつ。


歌舞伎町にあまた存在するキャバ嬢は誰に教わったのか、ある時期を境に、好きな映画を尋ねると『テッド』と答えるこが定型句になっていた。
10人に聞いたら4,5人は『テッド』が好きだと答える。マジで。嘘だと思うなら6000円を握りしめて、早い時間から適当な店に入って、聞いてみればいい。間違いなく打率は全盛期イチローを超す。
視点を変えて、ロハでコーマンを目指すなら、「○○ちゃん『テッド』とか好きでしょ」みたいなやり取りをするのもいいかもしれない。
先日、玲緒奈ちゃんもテッドが好きだと告白してきた。


「でも私、主人公があのマッチョな人にハマってるのとか、よくわからないとこもあってさ」
「あー!あれは…んーっと、なんだったっけ…フラッシュゴードンか。昔の映画でさ。いやー超駄作なんだけどね。スターウォーズの製作サイドは本当はフラッシュゴードンの権利を取りたかったんだけど、結局負けちゃってスターウォーズを取ることになったっていう経緯があってさあ。結果はもちろんフラッシュゴードンが大コケで、スターウォーズが大ヒットしたんだけどね。なんというか、その愛おしい経緯含めて、日陰者っていうか、一部に熱狂的なファンがいるんだよね」
「えー中田さんすごーい!超物知りじゃん!」
「別にそんなことないって」
「いやーなんか趣味映画って書いてるから、よく映画の話されるんだけどフラッシュゴードンの話する人なんて中田さんが初めてだよ」
「うっそー、初めてとか言っちゃって、玲緒奈ちゃん何個もそういうパターン持ってるんでしょ」
「マジだって〜マジで初めて〜」
それから耳元でこう言う。
「ほんとに初めてだよ。フラッシュゴードンの件は知ってたけどね。こういうところ来る男の人って映画とか興味ある人少ないから、あんまり話合わないんだけど、いまはほんとに楽しい」
ああ眩しすぎるよ玲緒奈ちゃん。ロハでコーマンどころか、その凄まじい女優っぷりであっさり手玉に取られて即ドリンクを追加注文。
隣の席では太ったおじさんが高そうな年代物のシャンパンを開けていたけど、俺の飲んだ鏡月の水割りの方がうまかったに違いない。
高そうなシャンパンと鏡月の水割り。どちらがうまいか。
「金力。そういうもので酒の味が決まると思っているわけでしょうが、それは甚だ間違っている」ってなわけですわ。


与太話から一気に現実的な話に移ると、今週は何かと政治スキャンダルが目立った一週間だった。
今村雅弘復興相の失言は“病気”の一言で済ませるとして……
学芸員は観光振興のがん」という山本幸三地方創生担当相の発言は兎に角センスがない。
癌を広辞苑で引くと“比喩的に機構・組織などで取り除きがたい難点”とある。学芸員は観光振興における邪魔者だと伝えたいのであれば、誤用ではないものの、今どき癌っていう表現。それはどうなの。
癌細胞は日々摂取生成されている。それと同時に、医療の発展で癌とうまく付き合っていける人も増えた。もちろん完全に取り除くことはできないし、転移が耐えがたい苦痛を呼ぶ事もある。
キツい事実ではあるけど、いまや日本人の半分が癌になる時代というわけで。
「○○は(我が組織における)癌」
周知の事実に目を向けず、時代遅れな言葉選びをする御人には、そりゃあ学芸員の役割なんて推し量ることができないでしょう。
カーターに学べばわかるとおり、政治家はセンスが何より大事。
とまあ、重箱の隅を突つこうと思っていたら、出ました!中川俊直の不倫問題!
父親から譲り受けた地位を利用して政治家になり、それでいて高校生からの付き合いがある奥さんをさしおいて、海外で愛人と極秘婚。これはなんともけしからん。
何度も書くようですけど
「血統と金力。そういうもので政治をやると思っているわけでしょうが、それは甚だ間違っている」ってなわけですよ。


さてさて競馬の話。
今年の天皇賞春はなんといってもキタサンブラックサトノダイヤモンドの二強対決が注目を集める。
両雄ががっぷり四つでしのぎを削る展開になりそうなだけに馬券的な妙味は期待できそうにないが、そこは波乱の舞台、淀の長距離。波乱にも期待しておきたい、と書いておきながら◎はキタサンブラック
もう逆らうのが馬鹿馬鹿しい稀代の名馬。はい。ストレスとか鮮度とかリズムとか、そうした物差しで測れる馬じゃないんでしょう。そう思うのがあの馬の戦績を理解するのに一番納得がいく。馬体は絞って出てきてほしいですね。


二強対決が騒がれるうちの一頭キタサンブラックは庭先取引推定価格2000万円ほどのブラックタイド産駒、かたやサトノダイヤモンドは落札価格2億4150万円のディープインパクト産駒。
針の穴を通すコントロールかのごとく、どちらが先着するかを選ぶ丁半博打に乗るわけじゃないけど
「血統と金力。そういうもので競馬をやると思っているわけでしょうが、それは甚だ間違っている」ってなわけですよ。
丸谷才一を読み返しながらそんな感じで。

相手にゴールドアクターアルバートディーマジェスティあたりをおいて少額で楽しむ所存です。