チャックベリーの訃報(高松宮記念予想)

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10代の頃によく聴いていた音楽ってのは年齢を重ねて聞いても耳に快く響く。
きっとそうした経験は誰にでもあって、自分の場合は、ラジオから録音した気になるバンドの音源を聞いていた時に、おじさんから「お前ブルーハーツとかも好きなんじゃないんか」と紹介され、よく聴くようになった彼らの音楽がそのひとつ。
反骨精神あふれる歌詞と歌い方に心ひかれていたんだと思う。今思うと「てめえの考えている世の中の不条理なんて、本当の意味での世の中の不条理から比べると驚くほど小さい」としか思わないものの、まあそうした反骨精神を持つこと自体が健全で……そんなところだろう。


つらつらと問わず語りをやめずに書き続けると、ブルーハーツにハマったことが音楽にのめり込むようになったきっかけだったように思う。
ボーカルの甲本ヒロトが影響を受けた音楽はなんなんだろうという思いから、The WHOを聴き、ピストルズを聴き……更にどんどんと時代を遡っていった。今風の言葉でいうとDigっていったわけだ。
そして、遡った先に居たのがロックンロールの創始者チャックベリーだった。
一生懸命英和辞典を引いて歌詞を和訳してみると、俺に振り向いてくれない女、大嫌いな教師、家出など、メロディーこそ軽快だったが、チャックベリーの歌詞には、思春期特有の鬱屈とした精神をほだす世界が描き出されていて、思わず共鳴した。生まれた国こそ違えど、強烈な連帯感を感じたことが彼の音楽を聴き続けた大きな理由なんだろう。ブルーハーツを聴く時間は減り、チャックベリーを聴く時間が増えていき……そこからというものジャズ、ヒップホップ、民族音楽と、どんどんニッチとされる音楽を好むようになってしまったが、どんな音楽でもユニティを感じる瞬間にグッとくる自分にとって、音楽の悦びを教えてくれたのはチャックベリーに違いない。


そのチャックベリーが先週末自宅で亡くなったという。御年90歳、当然といえば当然か。覚悟もしていた。とはいえ訃報には驚かされた。
読み書きはうまくできないけど、ギターだったら、鐘を鳴らすように弾ける。
そう歌いあげ、死の直前まで健全な反骨精神を抱き、何歳になろうとアルバムの製作をやめることのなかった創作意欲旺盛なロックの創始者が逝ってしまったのだ。
ただし、1人の偉大な存在がこの世から去ったとて、彼の残した功績が脈々と受け継がれていることも事実。ビートルズローリングストーンズはもちろん、ジョージアサテライツも、ラモーンズもチャックベリーがいなければ今の彼らではなかっただろう。
競馬に例えると、彼はさながら偉大な種牡馬のような存在だったということだ。それもサンデーサイレンス級の……と、問わず語りの音楽与太話から、無理やり競馬の話につなげたところで、今週の重賞の予想に。


今週末に開催される重賞で最も注目されるべきは高松宮記念
言わずと知れたスプリント王者決定戦で自分が本命に推す馬はワンスインナムーン。彼の父親は短縮大好き・アップ大好きアドマイヤムーン。京都牝馬組の相性は良くないとされるが、あえてその臨戦を評価したい。
S主体の馬である程度一本気に行けた方がいいだけに、外枠に入ったこともさほど悲観する要素ではないだろう。内を見ながら先頭集団に取り付けられたらベストで、重賞鮮度も活かせるはず。例年に比べて低調なメンバーなだけに、一発まで考慮して馬券を手広く抑えたい。


といつもなら、ここで〆るとこなんだけど、そういえば高松宮記念は誰がそう名付けたか“電撃6ハロン”とも呼ばれる。
ここまでの流れから何が言いたいのか、察しのいい方はお気づきかもしれませんが、ラモーンズの話。
チャックベリーが産み出した50年代以降の反骨精神にまみれたロックンロールを熱心に聞いていたことが、一聴するだに明確なラモーンズ。彼らの代表曲である『電撃バップ』の歌詞はこうだ。

奴らは真っ直ぐ並んで
強い風の中を行く
ガキ共は発狂してるぜ
後ろに積みこんで
蒸気を吹かす
ビートに乗って撃ちつけるんだ
なあいこうぜ、後ろから撃ち込んでやろう
奴らが欲しいものなんて知らないが
エンジン吹かして、準備はできてんだろ


パワーコードだけで奏でられる勢い任せのこの曲。なんというか高松宮記念のことみたいだな、と。
大したオチはないんですが、「ワンスインナムーン、エンジン吹かして、準備はできてんだろ」
そんな感じで。

 

(レース終了後追記)

ワンスインナムーンは結局16着で入線。

そういえばチャックベリーの影響下にあるのは清志郎も一緒だった。「この雨にやられて、エンジンいかれちまった」ってとこですかね、残念。