偉大な父の死(札幌記念予想)

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ブログに書こうか書くまいか。ずっともやもや悩んでいたことがありまして。
もったいぶらずに書くと映画監督のジョージ・A・ロメロが亡くなったことについてなんですけどね。なんだかブログのひとつのネタのように、このトピックを扱うことに気が引けてしまうというかなんというか。とはいえ、彼の死後に自分が抱いた感覚は包み隠さず書いて残しておきたいみたいな気持ちもあって。
書こうか、書くまいか、そうぼんやりと考えていたなかで観た『ナイトオブザリビングデッド』が改めて素晴らしかったので書くことに決めました。
文章の組み立てとして競馬予想に繋がるのかオチがつくのかどうかは謎。手グセで安易に紐づけたりしちゃいそうだけど、まあそれはそれで。肩の力抜いて素直に書くのが今回一番やりたいこと。そうすることで定型文的な哀悼をつらつら書き連ねないようにしたいみたいな思いもある。


そう、ゾンビ映画の父ジョージ・A・ロメロが7月16日に77年間の生涯を終えたんですよね。いつも楽しげに次回作の構想を喋る大男がいつの間にやら老衰して、病に冒されて亡くなったんですよね。
「著名人が死んだくらいで大げさに沈痛な面持ちキメこむんじゃねえよ!」と自分自身に突っ込みたくなる気持ちもなくはない。年を重ねるにつれ、直接親交のあった人だとか、昔からよく知っている芸能人だとか、いろんな人の死に直面するし、人間誰しもいつかは亡くなることなんて当たり前ですしね。安易にR.I.Pとか言いたかないですしね。
ただ、ロメロの死は想像以上にくらった、ほんとに。
朝起きて何気なしにTwitterのタイムラインを眺めていたら、訃報が流れてきてそのまま結構なボリュームで「え?!」って声が出た。ここのところ体調を崩してるということは知っていたし年齢も年齢。ね、わかってはいるはずなんだけど、ぼーっとしちゃって、吸ってたタバコの火種を足に落として火傷なんかしちゃったりして。
昼間には仕事仲間から「今晩集まってみんなでロメロ観ようと思うんだけど来る?」というお誘いもあったんだけど、なぜか断ってしまって。多分まだ自分の中でロメロが死んだということがよくわからなかったからだと思う。
死によって存在を改めて確認してその偉大さに気づかされる、という当たり前の作業に本当に時間がかかった。なんてったってロメロは自分にとって、いつもそこに存在した人で偉大さをヒシヒシと感じさせられる人物だったからだと今は思う、うん。


そんな彼の代表作『ナイトオブザリビングデッド』がシネマカリテで追悼上映されるということで、迷わず足を運んだんですよね。
スクリーンで観るのは実は初めてだったんですが、そりゃまあわかってたとおり、傑作で。
ゾンビを描きながらも、実際にロメロが向けている視線は、ゾンビの登場によってこれほどまでに歪みあうか! という人間同士の浅ましさなわけで、なんというか、アメリカがほんと冗談キツいっすよみたいな状況になってるのも笑えないというか。
俺たちの敵はすぐ近くにいる他人との差異なんじゃなくて、その差異を寛容して状況を改善させることができない(させようとも努めない)精神の方なんだよという当たり前の道徳をゾンビとの対峙によって起こる不道徳を通じて再度教えられましたね、ええ。
50年の時を経ても古さが一切なくて、現代社会にまで通じる風刺で一言お見事。薀蓄をつらつらと語ることが憚られるほど、エンタメとしてもシンプルに面白い。
オールタイムベストの大傑作! とまでは思えないものの、これまでのゾンビ(ブードゥー)映画を整理・再構築してエポックな発明として『ナイトオブザリビングデッド』が撮られていなければ、そこから連綿と続くゾンビ映画は確実に生まれてこなかったわけで、世界のエンタメ業界も確実に違うものになっていたことでしょう。この世にあまねく存在するどのゾンビ映画も『ナイトオブザリビングデッド』がなければ生まれてこなかったし、その影響下にない作品は一切ない。それほどまでの偉大な発明をしたジョージ・A・ロメロが逝ったんですよね。
死後の世界があるのかないのかわかりませんけど、もしあるとしたら、天国でも次回作の構想を笑いながら喋りながらも、ゆっくり休んでてほしいです、ほんと。


さて、今週末の重賞。ネオリアリズムの回避によって、どの馬も勝利のチャンスが増した。そのぶん着付競馬を目指す馬が減り、なかなかタイトな競馬になりそうな札幌記念。本命に推す馬はディサイファにした。
時計勝負が求められない舞台。ディープ産駒ながら多少重めで先行押し切りが持ち味のディサイファに条件がぴったり重なっているいまの札幌の馬場とメンツ。バウンド延長で楽に前で運んでくれさえすれば一発あるんじゃないですかね。休み明けで多少なりとも鮮度補給されたでしょうし……何よりオッズも現時点で単勝11番人気、どうやって算出するかはわからないものの、感覚的には期待値も高そうで。頼むからミラノとロードヴァンドールが引っ張る流れを視界のいい位置で見ててくれ。


……この世にあまねく存在するどのゾンビ映画も『ナイトオブザリビングデッド』がなければ生まれてこなかったし、その影響下にない作品は一切ない。と書きましたが、これまあ競馬に例えるとサンデーサイレンスみたいなもんなわけですよ。このブログを読んでくれている人に御大の偉大さが少しでも伝わるかなと…
そういえばディサイファも血を遡った先にはサンデーサイレンスがいますね。
ええ、まあ今回はこんな感じで。


※一番上に貼った画像は自分が編集制作を担当した書籍。もちろんロメロのことについても書かれてたりして。こんなこと言うの手前味噌でアレなんですけどいい本ですよ……是非