罵詈雑言(七夕賞予想)

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書店の辞典棚を見回してみると日本語の多様性に気づかされることしきり。国語辞典だけでも数十種類あり、慣用表現や類語、その他の辞典まで含めると、一生かけて日本語の1割も習得できないような気すらしてくる。
感情表現、舞台設定、官能小説用語表現、人物表現、感覚表現、死語……
これらも全て「辞典」として書籍化しているテーマ。中にはエッセイ風味のおおよそ辞典とは呼びづらいものもあるものの、そんなめくるめく辞典の世界から一冊を取り上げたい。『罵詈雑言辞典』という本がある。

「世の中に敬語があふれすぎている」
話し言葉が丁寧になり過ぎた」
そもそも日本語は罵倒語に乏しい。特に関東圏において、関西はやや豊富だが、それでも他国語と較べれば貧困だという。
馬鹿・阿呆・田舎っぺ・ぐうたら・素寒貧……たしかに罵詈雑言を連想してみても、なかなかすんなり、とは出てこない。
よく使われる罵倒語から耳慣れない、あるいは初めて聞く罵倒語まで。1200語もの罵詈雑言が収録されているというのだから(私の場合口の悪さに拍車をかけぬよう、なるべく読まないようにしているが)労してつくられた一冊であることは間違いない。元々は25年ほど前に初版が発行され、以降絶版になっていた本書。先月の9日に新装版と形を変えて復刊する運びとなったので、まあ宣伝気分でここまで書いてみましたよっと。


さて政治家が秘書に対して「このハゲー!」と喚く時代である。今回の復刊は社会を示唆していると言えなくもない気が。
それにしても「このハゲー!」でおなじみ豊田議員をめぐる報道には、ただただ違和感が募る。そんなことないですか?
19時からのバラエティ番組ではハゲをネタに笑いを取りながら、14時からのワイドショーではハゲとは何事か…と腕組みして批判。
いやいや、人の見た目を侮蔑するという、最低レベルの罵詈雑言をここまでカジュアルに仕立て上げたのは、バラエティ番組のあなた方でしょうよ。今さら真面目な面して「見た目に関することは言っちゃダメですよね」って一体なんのご冗談ですか。
見た目を侮蔑する言葉として「ハゲ」だけは言ってもオッケーなものとして扱ってきた張本人が、何かあったらこれですよ。てめえはお調子者の学級委員か。
誤解を防ぐために付け足すと「ハゲなんて人に言うもんじゃない!」と説教したいわけじゃない。むしろその逆。
たしかに人を差別するのはよろしくないが、問題は罵語そのものを差別語だとして排除する見当違いさ。杓子定規なポリティカルコレクトネスを盾にして、あらゆるものを制限して監視して、どんどん生きづらくなっていくのが嫌でさ。
本当にダメなのは、特定の人を罵る態度や精神構造やそれを助長する欺瞞に満ちた振る舞いであって、罵語にあらぬ罪を被せても仕方ないっすよ。
そうそう罵語に罪はない。競馬場にいるとよく気づかされるが、言い回しひとつで罵倒は豊かな日本語表現につながるし、筋の通った流麗な罵詈雑言は聞いていて気持ちがいいもので…って話が逸れそうなんで競馬の話に。


今週末開催されるはハンデ重賞の七夕賞。本命に推す馬はバーディーイーグルに決まっている。
前走で差しに回して激走したものの、そこはリズム上げてきてるブライアンズタイム。帳消し、むしろプラス。延長だし素直に先行の位置取りショック、なんてったって53kg。素直にゲート出れば中団前目にはつけられるでしょう。ペースはそこそこ流れるだろうし、道中は脚をためることに専念しつつ、夏に向けて取り戻してきた破壊力で直線ズドン。そして言わずもがなニジンスキー内包は七夕賞の特注血統。それで9番人気ですか。全力でマークシートを塗らせていただきます。

「このハゲ!何が東の豊じゃ!中枠で控えさすな言いよろうが!中団で追走させりゃよかろうもんを!ほんまにカバチタレが!」
こんな罵詈雑言が思わず口をついて出るようなレースにならないことを期待しています……