貧困の中での競馬(アルゼンチン共和国杯)

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芥川龍之介の死因は服毒か服薬か、はっきりとはしていないものの、自殺によってこの世を去ったことは、広く知られている。

では、なぜ芥川は自殺に思い至ったのか、ご存知でしょうか。
苦悩に満ちた彼の作風から「いい作品を書くことができず、才能の限界に失望して自殺した」とイメージされることが多いものの、それは間違い、というか、文芸評論家のロマンチックな願望にすぎない。
芥川の本当の自殺の理由は「義兄の死」「貧困」である。義兄が借金をつくり、鉄道自殺をしてしまったことで、芥川はその借金を背負うことになり、結果、貧困の中で執筆活動が停滞、彼は死を選んだのだ。

 

芥川龍之介がそうであったように、貧困が人の思考能力を奪い取るということは、ままあるように思う。どこぞの弁護士事務所のCMも「あなたの頭の中、借金で一杯になってませんか?」と優しげに語りかけるキャッチコピーで、債務整理を提案してくるものがあるけど、その弁護士事務所に頼るということは、借金を取り立てる側が消費者金融から、(地上波の広告費を厭わないほどの収益を上げているような)よりエゲツない弁護士事務所に変わるだけ。にも関わらず、その事務所を頼る人は少なくない(だからこそ、広告を打てるほど儲けているわけで)。

少し想像すれば、街の法テラスだとかに頼ればいいものの、まさしく、金の手筈で頭がいっぱいになって視野が狭まってしまうんだろうな、そんなこととか。というか、俺もそんな時期ありましたし。貧困は思考能力を鈍らせる。

 

いやまあ、借金の有無に関わらず、お小遣いだとかバイト代だとか、限られた可処分所得の中で競馬をやっていると、“貧困によって思考が停滞する”それに似た局面によく出くわす。そんな話がしたい。
嫁から次の小遣いをもらえるまで後2週間。平日の昼食代やタバコ代、同僚との飲み会代を考えると1日平均1,500円、2週間にして20,000円は必要なものの、財布の中には5,000円しかない。そんな時に競馬なんてやろうもんなら、もう大変。
目標額が20,000円とハッキリしているからこそ、手元にある5,000円を目標金額に届くように賭けてしまうのだ。
例えば1-7、もしくは1-9の馬連が来そうだと予想したとする。持ち金を20,000円に増やすために絞りに絞った勝負レース。
1-7のオッズが5倍、1-9のオッズが10倍だったとしよう。いつも通りの買い方であればどちらもにレートに準じて均等に賭けるか、オッズで傾斜をつけた額を賭けたりするものの、今回は5,000円の元手を20,000円に増やす必要がある。そうした状況で、1-7の馬連を買おうと思うとマークシートは4,000円分、1-9の馬連であれば2,000円分塗りつぶす必要がある。つまりどちらも買うということは許されない状況。そこで、より堅いオッズ、つまりより可能性の高いと考えられる1-7の馬連を購入したところ、1-9の馬連で決着。
あちゃー、いつも通りの賭け方なら適中だったのにー。なんて、ちょっと極端な話だけども、似たような経験は馬券好きなら誰しもあるのではないだろうか。
これこそ、芥川龍之介と同じようなもの。貧困が招いた思考停止状態。こんな具合で馬券を買ってちゃ当たるものも当たりませんよね、ほんと。


そんなこんなで、今週末の重賞アルゼンチン共和国杯で本命に据えるのはトレジャーマップ。
「いやいや!自分!なんかえらい人気ないところから入って!さっき自分が書いてましたけど、目標額でも設けてはるんとちゃいます?!」
決してそういうわけではなく、オッズと自分の評価との乖離を最も感じる馬がこの馬なのだから仕方ない。
まずは何より斤量が魅力。今日の東京10Rで50kgのゲッカコウと54kgのラヴィエベールが半馬身差。馬の名前だけ見てたら、ラヴィエベールに対してゲッカコウが0.1秒差まで迫るなんて、なかなか考えられないけど斤量差が有利に働くというのはこういうこと。トレジャーマップは馬格のない馬なだけに、このハンデ設定は、他馬の軽斤量より有利に働く可能性が高いと見た。
また、過去の戦績を見るだに連チャン期が存在するのもこの馬の特徴。父・ステイゴールドという点も加えてSCタイプと見た。
これまでは、その父の血を発揮できていないのか、アップのタイミングで意外にも好走してないものの、今回は軽斤量・内枠という武器もある。まあ、とにかく、3着内を期待した馬券をしこたま買う。次の小遣い支給日までに20,000円を確保させてください!神様!

(たまにはこういう軽い感じで締め!)