もう喧嘩はやめような、うん(帝王賞)

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 宝塚記念は上半期を締めくくるに相応しい見応えのあるレースだった。勝ち馬マリアライトの勝因は間違いなくローテーション。ここに至るまでの番組選択が他とは1枚も2枚も違った。駅に降り立った瞬間アルコールの薫りに包まれる街“立石”で例えるならば、『栄寿司』で軽く魚をつまんで、『宇ち多゛』でもつ焼きを頬張り、『江戸っ子』で隣客と歓談し、酔いをさましながら少し歩いて、『二毛作』でトマトおでんを体に染みこませるといったところか。王道ローテとはいえないが、逆にそれが大正解、そんなローテーション。マリアライトの勝利は陣営の勝利、間違いない。そんな素晴らしい陣営と正反対の陣営がうちの家族。

 

 18歳で地元広島を離れて以来、正月に顔を出す程度となっている帰省事情。別に実家が嫌だというわけではないけど、遠いし、時間もお金もかかるだけに、おいそれと帰る気にはなれないというだけ。それだけに正月の帰省は大事にしたい。帰省の際には、タダで食える飯、無限に出てくる缶ビール、そしてなんならあたかかい家庭による、仕事・競馬のストレスからの解放を期待して新幹線に乗り込む、ものの、その3つが叶うことは、まずない。正確に書けばタダ飯は食えるし、缶ビールも酩酊するまで飲める。だが、あたたかい家庭、これはまずない。元来、西で生まれ育った人間だからか、全員口は悪く、基本的に相手の話には否定から入ってしまう。

祖母が「本なんてつくってお金になるん?ちゃんとご飯食べとるん?あんまり酒ばっか飲みよったらいけんよ」と言えば

母が「ちょっとくらい飲んでもええじゃない」と俺より先に返す刀。

俺が「まあ、金にならんかったら、街に本屋とかそんなにないじゃろうね」と皮肉で返すと、

伯父が「でも、ニッチな本ばっか作っとるんじゃろうが」と続き、

祖父母が「ようわからんのう、これは」と言って、紅白歌合戦ゴールデンボンバーを見つめる。

 舌が回ることに加え、アルコールも入っているからか、上のやり取りに消費する時間はおおよそ2秒ほど。そのスピード感で丁々発止のやり合いが続く。数年前は駅伝が始まってから終わるまでこういったやり取りが続き、終いには祖母と母が喧嘩し始め、お互い泣き出すという事態にまで発展。その時は俺が「もう喧嘩はやめましょう!」と声を荒げて終戦。それ以来、毎年喧嘩をおさめることが正月の仕事と化してしまった。喧嘩の種を見つけたら、すぐさま自分が間に入り、早い段階で方を付ける。そのコツが体に、脳みそに刻み込まれたここ数年。

 

 さてさて、帝王賞には現状のJRAトップホースが勢揃い。まさに上半期最強ダート馬決定戦に相応しいメンバー。しかし、ここにも喧嘩の種が見える。自身のスタミナを無視してまで、必要以上にコパノリッキーを突っついてきたホッコータルマエのことだ。

ホッコータルマエよ、馬主も、調教師も、騎手も、ファンも得をしない結果にいつもなってるぞ。もう引導を渡そう。そういうシナリオでいいじゃないですか。1回くらい喧嘩をやめておきましょうよ。な。」

俺がホッコータルマエにしっかり言っておいたから、コパノリッキー単勝を皆で買いましょう。