馬券

血統と金力(天皇賞 春)

「血統と金力。そういうもので政治をやると思っているわけでしょうが、それは甚だ間違っている」(要旨)こうして近代政治を批判したのは稀代の知識人、丸谷才一だった。他にも「かつては、寝ないことがフェミニズムであった。そして今は、寝ることがフェミニ…

勘違い(マイラーズC予想)

文章は1日書かないだけで勘を取り戻すために少なくとも1日はかかる。どこかの作家がなにかのインタビューで答えていた。 「そんな!トップアスリートじゃないんだから」と笑う方もあるかもしれないが、いやはや実際のところ本当にそうで。文筆が生業ではない…

言霊を説いた教師(皐月賞予想)

言葉には言霊が宿るんよ。自分の言葉は言霊になって戻ってくるけん、あんまりそういうこと言うちゃいけんよ。もっといい言霊を吐きんさい。小学2年生の頃、同級生をからかっていると、担任の花本先生にそう咎められた。体調が悪くて頭が痛いと言うと、両手を…

花の楽しみ方(桜花賞予想)

「うちが日本に帰る頃には散っとるじゃろうけん桜の写真送って」ヨーロッパで音楽修行中の幼なじみからこんな連絡が届いた。ドイツにも桜は咲いてるはずだけどな…と思って調べてみると、植樹こそされているものの咲く時期は4月下旬のようで、ちょうど彼女が…

道徳教育(大阪杯予想)

ある日、お母さんからお菓子代として200円のお小遣いをもらった中田くんは近所にある和菓子屋に行きました。すると、店の前で「お腹が空いたよ〜」と小さな声で涙ぐむ女の子がいました。ただし、食べたかったいちご大福の値段は110円。ふたつ買って、ひとつ…

チャックベリーの訃報(高松宮記念予想)

10代の頃によく聴いていた音楽ってのは年齢を重ねて聞いても耳に快く響く。きっとそうした経験は誰にでもあって、自分の場合は、ラジオから録音した気になるバンドの音源を聞いていた時に、おじさんから「お前ブルーハーツとかも好きなんじゃないんか」と紹…

ある日の風俗店の話(フラワーC予想)

「イラシャイマセー、ツギノオキャクサマー」おっとこれは聞いてない。珍しく競馬で大勝したその日、いつもなら猫背をさらに丸くした情けない姿で歩くオケラ街道を、今日は胸をはって、晴れやかな気持ちで歩いてきたというのに……50分12,000円、いつもより高…

赦して信じる(金鯱賞予想)

「先生、この女は姦淫の場でつかまえられました。モーセは律法の中で、こういう女を石で打ち殺せと命じましたが、あなたはどう思いますか」律法学者の彼らがそう言ったのは、イエスを試し、訴える口実を得るためだった。しかし、イエスは身をかがめて、指で…

司会者のミス(弥生賞予想)

第89回アカデミー賞が発表された。『アーティスト』が作品賞を受賞して以降、賞のセレクトが若干渋めに寄って、日本で公開されても売れない作品が多いなか、そのポップなルックから業界に携わる方々が動向を大変気にしていた目玉の作品が『ラ・ラ・ランド』…

新聞の見出しを考える(フェブラリーステークス予想)

自分の携わった本がなかなか売れない。出版不況が叫ばれて早数年。仕方ないことなのかもしれない。とはいえ、新たに企画をひねり出す必要はあるわけで。多くの編集者は企画づくりに日々苦心する。そんな時代にもかかわらず有象無象の出版社は毎年毎年信じら…

流石にふざけすぎ……(京都記念予想)

話題のドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』。「ガッキー可愛いな」「石田ゆり子さんもいいぞ」…などと、まったく世間と同じ反応で見たのだが、ドラマのあちこちに効果的に使われるアコーディオンのBGMやSE(効果音)を聞いて、ぼくは、「ん?」 と思った…

身の丈を考える(東京新聞杯予想)

一時期に比べると随分マシになったものの、いまだにエンゲル係数が高い。決して美食家というわけではなく、ただただ酒量が多いだけだが、これがなんとも由々しき問題で毎月末には、酒代・馬券代を捻出するためにそろばんを弾く事態になる。そんなことが多々…

知ってるつもりか!(根岸S予想)

杉の宮駅が京王線の駅だとは知らなかった。「そんな駅、京王線にないですけど?」なんてツッコまれるかもしれませんが、最初に書こうと思っているのは、スタジオジブリ製作の映画『耳をすませば』の話。(まあ、いつものごとく、この後、二転三転しながら競馬…

しみったれた夜(AJCC予想)

Y口A香(29歳)中学高校大学。それくらいの年頃でぼんやり考えていた将来のかたち。仕事とか生活とか、あてもないのに何故か幸せな未来を想像できていた。「23歳くらいで友達に紹介してもらった男と付き合い始めて、2,3年付き合って結婚して。その次の年には子…

大学入試センター(日経新春杯予想)

個人的な一面ニュース。数日前、空き巣に入られて、60万円弱の被害を受けました。正直憔悴しきり。その一方、世間にとっての一面ニュースは今週末に実施されるセンター試験といったところか。中山競馬場へと向かう東西線にも、受験生と思われる若者が多く居…

挫折から救われる(シンザン記念)

挫折を一度も味わったことのない人間なんて、そりゃまあ少ない。そんなことは、オリコンランキングを“頑張れ!負けるな!諦めるな!”ソングがいかに大きな割合で占めているか想像してみると想像がつく。志望校に落ちて浪人生活が決まった時にKANの『負けない…

詰まりに気をつけろ(中山金杯予想)

新幹線のホームにて小さな男の子に対して。「お正月は何してた?」「おじいちゃんの家に行って凧揚げしました!」「楽しかった?」「楽しかった!」 駅前のロータリーにてスーツを着た女性に対して。「年末年始はどのように過ごされました?」「寝正月でした…

止めたくても止められない(東京大賞典予想)

年の瀬。 気持ちは自ずと1年の振り返りに向いてしまうもので。プリンスにボウイ、ジョージ・マイケル、一時代を築いた数多くのアーティストがこの世を去った。そしてイギリスもEUを去った。かと思えばアメリカでは不動産王のトランプが大統領就任。当初の口…

まあ今日くらいは(有馬記念予想)

男は金曜日の夜になると途端に柔和温順になる。彼女の顔色を窺いつつ、積極的に皿洗いをし、洗濯物も干すし、風呂掃除もする。なんならマッサージだって自ら買って出る。「早く馬柱眺めて明日の予想がしたいんだけどな……」そんな気持ちはおくびにも出さない…

強い女性は美しい(朝日杯FS予想)

「媚びない、めげない、くじけない」 バラエティ番組に出演した際、座右の銘をそう紹介したのは、稀代の名女優である梶芽衣子だった。テレビでそう答える様子を眺めていた俺は役柄のイメージそのままな座右の銘に思わず膝を打った。彼女の代表作といえば、カ…

地元をレペゼン(名古屋グランプリ)

年の暮れ、こんな季節になると、地元の友人との連絡が途端に増える。 中高の同級生と連絡を取り合っては新年会の日取りを決め、地元の名物が美味い店を抑える。なんなら、そんなに仲良くなかった女の子にメールしてみたりもする。地元の名物というと、お好み…

血筋と依存症(阪神JF予想)

日曜日の夜、クリスチャンでありながら、とびきり押しが強い彼女が言うにはこうだ。「どれだけ悲惨な環境にいても、威厳を保ち続けられる人には敬うべきものがある。どうしようもなく、ひどい状況に耐えて尊厳を保ち、自分たちもみんなと同じ人間だというこ…

生きてるだけで丸儲け(チャンピオンズC)

超豪華なメンバーが揃う予定だった2016年のチャンピオンズCに出走を予定していた2頭の悲報が週中に聞こえてきた。 まず、ホッコータルマエは脚の故障が見つかって引退。そして、タガノトネールは調教中の事故で予後不良処分となったとのことだ。Twitterでそ…

背伸び(ジャパンカップ)

中央競馬のG1レースが開催されるような競馬場にいると、自分が無理に「背伸び」をしているような気がする時があるし、歴史あるG1レースであれば、そんな気持ちは尚更強くなる。 そこには、この国を代表するサラブレッドたちが登場し、その国の競馬史を目の前…

逆転満塁ホームランのような(マイルCS)

マンガや映画のワンシーンだと「ベタすぎるだろ」と一蹴されてしまうことが、たまに本当に起きることがある。「9回ツーアウトからの逆転ホームラン」「無一文から大金持ち」「転校生が美人」とか。物語を駆動するための装置としては有能だけど、リアリティと…

忍耐強いのかタフなのか(エリザベス女王杯)

ワイドショーを眺めていると、連日連夜アメリカ大統領選の話題で事欠きませんが、いかがお過ごしでしょうか。ヒラリーになった方が良かっただの、トランプでいいんだだの、いろんな思惑をお持ちの有識者のコメントが、テレビでは矢継ぎ早に飛び交っていて、…

貧困の中での競馬(アルゼンチン共和国杯)

芥川龍之介の死因は服毒か服薬か、はっきりとはしていないものの、自殺によってこの世を去ったことは、広く知られている。 では、なぜ芥川は自殺に思い至ったのか、ご存知でしょうか。苦悩に満ちた彼の作風から「いい作品を書くことができず、才能の限界に失…

強さ、憎らしさ、身の程知らずさ(JBCクラシック)

秋天が終わったかと思うと、翌々日にはメルボルンカップ・北海道2歳優駿が開催され、その翌日には西日本ダービー。さらにその翌日にはJBCが開催。グレードレースが立て続けに開かれて、地方競馬ならびに海外競馬の馬券も購入される好事家の皆さんにとっては…

大口投票とかの話(天皇賞・秋)

夏から秋。 季節の境目として、秋分という時候こそ定められているものの、2016年に生きる誰もが、実感として「秋分になったら秋だ」と思えないように、季節の境界は明確なものではない。同じように感じられるのが、夏競馬から秋競馬。そりゃ、開催がローカル…

芦毛の馬の話(菊花賞)

「絶対に大丈夫やって。奨学金返済のアテになんで。」 当時、日本一の売り上げを記録していた大阪駅のマクドナルドで働いていた男は、店長からそう言われ、その年の有馬記念で走る唯一の芦毛馬の単勝式馬券を買った。「M、帰ったらな、このビデオ100回見てみ…